For you, from me@右己さん

 はい、どうぞ。
 そう言って綺麗な爪の細い指先から手渡されたのは、不思議な輝きを放つ鉱石。
 誕生日ではない。その他のアニバーサリーでも自分が覚えていないなんて有り得ない。
 表裏両面が滑らかな曲線を描くダブルカボションにカットされた石には一切の装飾もついていない。指輪でもなければペンダントでもブレスレットでもないただの石は、送り主の「何でもないのよ」という意思を主張しているかのようだ。
「貴方にぴったりでしょ」
 艶やかで水際立った笑みは、この美しい魅力的な戦友の武器の一つ。
 オパール―――二酸化珪素粒子の集合体。或る角度で入った光を分散・反射し、その反射光線群の相互干渉作用により、この宝石独自の華麗な虹色を生み出す石。
「あなたの心はオパールのようだ。いつも移り気で何を考えているかわからない」どこかの世界のどこかの戯曲に、そんな台詞があったような。
 直径2cmほどの良質のブラックオパールの中、きらきらなんて安っぽい擬態語の似合わない、幻想的で壮麗な、色取り取りの光が踊る。 
 謎めいた美しさ。この燃え立つような珠玉は、寧ろ彼女にこそ相応しいのでは?
 黒曜石の瞳を見つめて囁く。
「虹色、なんてさ、よく言ったもんだよな」
 翡翠の瞳の恋人に応える。
「オパールが七色に輝くのを、プレイ オブ カラーって言うのよ」 
 play of color ―――『遊色』
 なるほどね。

 特別な意味なんてないけれど、ね。
 こんな恋人たちの昼下がり。

素敵なエファとロアンを頂戴いたしました。遊色には「なるほど」と得心いたしました。
どうも有り難うございました!