太陽に背いて

 珍しい相手に声を掛けてしまった。
 自分なら放っておくか、せいぜい揶揄する程度の関係しかない対象だったし、何時もお節介を焼いてるお人好しの教室長を笑っていたくらいだ。
 だから、これは忠告ではない。
「入れ込むなよ」
 不機嫌そうな、そして訝しげな表情が返される。さっきまで、皮肉を装っていても確かに笑っていたくせに。
 ラメセスが誰か特定の個人と仲良くなるのは結構──自分に関係ない限りは。そうロアンは思う。
 ただ、相手は選んだ方がいい。
「太陽は直視しないだろ?」

 直視なんかすれば眼をやられてしまう。少し利口なら誰だって知っていることだ。
 闇の中に一条の光を差し込む、それは確かに強烈な存在。でも眼をやってはいけない。手を出してはいけない。それがルール。
 身が惜しければ。

 ふいに、不機嫌な顔でロアンを見やっていた彼の唇の端が歪んだ。吐き出されるのは、ただ一言。辛辣な──
「それで、顔を背けた成れの果てが貴様か」
 余計なお世話だ、と。
 日頃イクスが受けているように焦がされるより意地の悪い報復だ。
 きついなぁ、とぼやいてみせる間もなく立ち去られた。
 そんな──太陽から顔を背けているつもりはないけど。己は、太陽に焦がれて生き続けるものだから。
 だけどお前は、太陽に灼かれてしまうかもしれないだろ?
 ……それこそ、自分らしくないお節介。
 成程、余計なお世話だった。

 一人取り残された廊下で肩を竦めると、ロアンは踵を返した。
 太陽に向かって──