• 2015年07月登録記事

宝塚月組公演「1789」も、明日が千秋楽。
観たいけれど、もちろんチケットなんか持っていないし用事もあるので行けませんが、悔しいのでせめてジョルジュ・ジャック・ダントン氏と革命家たちのことくらい語ろうと思います。

革命家チームは、3人1組で見分けが付かないと言われることもあるようですが、ロベスピエールとデムーランの青さに比べると、ダントンはもう少し世間が見えている気がします。
第9場・脱獄後のロナンが、革命家たちに「しょせんあんたらは金持ちのボンボンで〜」と食って掛かったシーンで、デムーランやロベスピエールはロナンの言に真っ向から反論するのに対し、ダントンはただ全員に落ち着こうと諭しているように見えました。だから最終的には激昂するロナンを抑えて、握手の手前まで持っていけたのでないでしょうか。
実のところ、史実でも劇中でも、あの3人の中で本当に金持ちなのはダントンだけだと思うし、台詞も一番享楽的なのですが、その分、人の感情が見えて、懐に巧く入っていけるタイプなのだろうと思います。
デムーランは素直で良い奴だけれど、それは自分の発言で傷付く人がいる可能性なんて考えたこともない無頓着な屈託のなさでもあり、ロベスピエールはどこか正論第一っぽい生真面目さがあって、付き合いやすくはない。そんな印象です。

それだけに、あの人がモテないという設定は変だと思います。
あれだけ人の気持ちがわかって、優しくて、でもどこか庇護欲を擽り、学はあるけれどジョークも飛ばすし、兄の革命かぶれを嘲笑ったソレーヌが思い直すくらい情熱もあり、金持ちで、好きな女に貢ぐことを厭わない男が、なぜ振られちゃうんですかねぇ。
やっぱり、本当は妻がいるからか?(笑)

バーネット著 土屋京子訳「秘密の花園」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
両親を失い、英国の叔父に引き取られたメアリは、叔父が10年前に封鎖した「秘密の庭」の入口を発見し、ムーアの自然児ディコンの協力を得て、庭の再生に着手する。やがて病弱で癇癪持ちの従兄弟コリンを庭に連れ出すと、自然に触れたコリンは生きる力を取り戻す。

同じ作者の「小公女」と「小公子」は子供の頃の愛読書。
当然「秘密の花園」も既読……だと思っていたのですが、メアリーのキャラクターに驚いたので、子供向けのダイジェスト版しか読んでいなかったのだと思います。
こんな、可愛げのない女の子だったんですね!
でもメアリーもコリンも根から捻くれているのではなく、単に関わってくれる人がいなかったため自分勝手な子供になっただけで、私達のような大人が子供とどう接するかが重要なのだと改めて諭される気がします。

メアリーは元々自分の問題を抱えていないため、後半はコリンが主人公となっています。メアリーが影も形も出て来ないエピローグは、ちょっと驚きでした。
それ以外の点では、さすがに名作で、単純でまったく捻りのない筋なのに、秘密の庭を探そうとしたり、屋敷の開かずの間を探索したりとするシーンだけでも面白いし、台詞には色々な含蓄を感じました。

なお、過去に英国に行った際、ミュージカル「The Secret Garden」を観ています。
台詞はほとんど理解できなかったので細部は覚えていませんが、メドロック夫人に連れられて電車に乗り、馬車に乗り、という冒頭の旅行シーンがスーツケースで演出されていたことは非常に印象に残っています。

3DSの基本無料RPG「電波人間のRPG FREE!」を遊んでいます。
http://www.denpafree.jp

元々有料ソフトだった「電波人間のRPG」シリーズが元になっているので、基本的なところは良くできています。
電波(Wi-Fiビーコン)を元に生成されたキャラクターを集めて能力を強くしていく、という最初のアイデアが面白いですね。
ただ、色々な場所の電波をキャッチして電波人間を集めてもまたレベル1から始まるので、ある程度アンテナ持ちの電波人間が集まったら、以後はそのメンバーを育てていくのが効率的な気がします。この辺は勿体ないですね。

ゲームとしての難易度は見た目の印象より高めで、特にボス戦は歯応えがあります。
戦闘中、複数の電波人間の攻撃がまとめて処理されたり、お任せコマンドがあるので雑魚戦はサクサクしているのが好印象。
仲間の表示切り替えがL/RボタンではなくX/Yボタンであるとか、慣れなくて操作ミスするところもあり、ボタン割り当てには若干不満がありますが、それで大きな問題が生じるようなゲームではないので許容範囲でした。

ちょうど一周年記念イベントが開催されているので、こまめにチェックインしています。
でもあまりステージは遊べていません。
基本無料ゲームのお約束として、プレイ回数に当たる「スタミナ」という要素があるのですが、これの回復待ち時間が結構長いのです。
例えば、「ポケとる」は30分に1回プレイ分のハートが入手できました。
「電波人間のRPG」の場合は、5分でスタミナが1回復。こう書くと早い気がするけれど、実はスタミナ1点ではなにもできないのです。なんせ、最初に選べる低レベル冒険で、スタミナを10消費するのですから。高レベルの冒険になればなるほど消費量が増えて、今では30以上要求されます。
帰宅後、1回冒険したらそれで終わり。そのくらいのプレイ頻度なので、同じマップに再挑戦とかしていると、全然進みません。
電波人間の幸福度を上げないとレベル上限を突破できない、という要素もあるので、毎日少しずつプレイすることが前提のゲームなのかな、とも思います。

安部龍太郎著「密室大阪城」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
母・淀殿が豊臣再興の檄を飛ばすため、秀頼は幕府から謀叛を疑われ窮地に立つ。和解策も淀殿派の横槍で失敗し、秀頼は遂に一戦して、勅命和議を引き出すことに豊臣存続の望みを託す。二派に分かれる城内をまとめつつ懸命に戦う秀頼だったが、淀殿が太閤秀吉を毒殺した証拠を幕府が朝廷に差し出したため、勅命和議工作は失敗。このとき、秀頼は己を貫き滅亡する覚悟を決める。

あの巨大な大阪城に「密室」と銘打ったタイトルが気になって読みました。
あらすじの通り、豊臣秀頼が好意的に描かれています。活発には動かないけれど、決して愚鈍なためではなく、事情により動けないのだということが描かれているので、共感も持てます。豊臣のために死んだ人間が山程いることを思えば、こういう大人物であって欲しいという判官贔屓気分も働いて、秀頼を応援したくなりました。
逆に、私は何を読んでも淀殿が好きになれませんね。秀頼にも「事態を悪化させるばかりの母親は早く見捨ててしまえ」と舌打ちしました。

大阪の陣は、そこに至るまでの前提が複雑ですし、豊臣方の中でも勢力争いがあるので、長編になりがちですが、秀頼と淀殿の二人に視点を絞っていたことと、夏の陣に関しては結末以外触れないという形で、分かりやすく整理されています。
「軍師二人」では戦術眼が合わないとされていた又兵衛と幸村が、お互いに一目置く風に描かれていたのも、個人的には嬉しかったですね。その他の登場人物に対しても、全体的に非常にニュートラルな評価を感じました。

ベルンハルト・シュリンク著 松永美穂訳「朗読者」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
15歳の僕は、年上の女性ハンナと恋をした。ハンナは物語を朗読させることを好んでいた。数年後、僕は傍聴した裁判の被告人席にハンナを発見する。やがて僕はハンナが文盲を隠そうとするため、不要な罪を背負い込んでいることに気付き、彼女の自尊心を無視して告発すべきか悩まされる。終身刑となったハンナに、僕は物語を朗読しては録音テープを送る。出所が決まったハンナは、独房で命を絶つ。

タイトルが秀逸。

恋愛小説という触れ込みで読んだので、予想外の展開に驚きました。
どちらかと言えば、戦争犯罪に対してどう向き合うかを問う面の方が強い気がしました。でも、それは私が二人の間を恋愛という言葉で結び付けることに抵抗感があったからかもしれません。親子でもおかしくないような二人の性交渉が描かれていることが、私にはどうしても引っ掛かって、納得できませんでした。

第二次世界大戦で、同様に敗戦国となった日本とドイツですが、戦争責任に対する向き合いかたはだいぶ違いますね。
ナチを支えた親世代に対して、子供たちが「断罪しなければならない」と考えたことは、それ自体の善し悪しはともかく、問題意識を持って歴史を学ぶ動機になったわけで、それは近現代史にほとんど触れない日本とは対照的だなと思います。

ひたすらテープを送り続ける僕(ミヒャエル)の行動に対して、ドイツ人らしいと思ったのが、我ながら面白かったです。