• 2015年08月登録記事

海野弘著「緑の川の旅人 ー慶長茶湯秘聞ー」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
関ヶ原の戦いで茶人の父を失くした朱平は、織田有楽に拾われ有楽の茶を学ぶ。やがて父が関わっていた茶湯の秘密結社「緑の川」に触れ、茶を通してなぜ生別や身分によって人を分ける動きがあるのかを考え、誰もが平等な茶を作りたいと思うが、取り締まりを受け、次代へ望みを託す。

なぜ、単行本ではタイトルだった「慶長茶湯秘聞」という、なんとなく扱っているお話が分かる名称をサブタイトルに回し、よく分からないタイトルに変えたのだろう、と疑問に思いながら読みました。
読んでみると、確かに茶の湯をテーマとした話ではあるけれど、それ以上に、作中に登場する結社「緑の川」に作者の語りたいことが盛り込まれているのだなと分かりました。
思想的な会話が多いので、少し戸惑いましたが、茶の湯を使って政治介入しようとする利休、織部、有楽といった茶人たちと、市井の茶人たちの茶の席の描写が面白かったです。
特に「密室大阪城」で酷い人物として描かれた織田有楽斎がいい人物に描かれている点は、歴史物ならではの面白みを感じました。

この世に対する朱平の疑問は、今でも通用する疑問かも知れません。
作中で語られている通り、徳川時代は、身分制度を強めて諸々を制限することで人民を統治しやすくしたんだと思いますが、それが200年も続くと、日本人の根の部分がそうなったところもあるのでないかと感じます。

TVアニメ「アルスラーン戦記」20話「騎士の素顔」
http://www.arslan.jp

エンドカードは大久保篤先生のアルスラーン。

半分はオリジナル展開でしたが、今回のオリジナル展開は面白かったです。
騎士姿から女性姿のエトワールを想像したときは、正直あまり少女らしくない造形だと思ったのですが、予想外に可愛い素顔でした。それに、お互いの正体に気付かずに何度も出逢い、背中を押す役目を果たすというのは良いですね。これは、原作者には書けない展開じゃないかと思います。ただ、10話でも会っているのに幼年期以来のような語りかたには疑問符が付きました。
このままだと「BASARA」みたいに、戦場で決定的な瞬間にアルスラーンの正体を知るという形になりそうで、その瞬間にエトワールが打ちのめされないか心配になってきます。
しかし、「ナルサス」という人物名を二度聞いておきながら両者を結びつけて考えていない時点で、本人のミスではあるのですよね。

ようやく面白くなって来たのに、放送枠があと1か月分しかないということが残念です。
この先の展開だと区切りの良い箇所が思い付きませんが、どうエンドマークを付けるのか、楽しみにしておきます。

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ヒミツキチラボのリアル脱出ゲーム「僕と勇者の最後の7日間」に参加してきました。
http://realdgame.jp/ajito/lab/2015/05/boku7days.html

1テーブルに集まった6人が6つの職業に扮し、謎を解いたりNPCの間を立ち回って、ドラゴンを撃退するために装備や戦術を整え、7日後の決戦に挑むというRPG仕立てのストーリー。

一カ所に集まって連続する謎をどんどん解いていくタイプの「リアル脱出ゲーム」は初参加ということもあって、ひらめきが要求されるタイプの謎はかなり手強かったです。
ずっと詰まっていると、スタッフがヒントを出してくれるので、何とか決戦には辿り着けましたが、ドラゴンに負けてしまいました。
面白かったけれど、とにかく時間内に謎をすべて解かないといけないというチーム協力プレイなので、自分が役立たずでなかったか心配になりますね。即席のパーティの割には進行がスムーズだったと思いますけれど、組む人によっては結構大変な目に遭うかも、と思いました。6人全員友達で固めていった方が、より楽しそうです。

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著名スタッフによる「サガっぽいゲーム」ということで注目を集めた、3DSのRPG「THE LEGEND of LEGACY」体験版を遊んでみました。
http://www.cs.furyu.jp/legendoflegacy/

体験版で遊べる範囲は、森の廃墟〜潜む森まで。
体験版なのに、全7人の主人公を選べるのは勿論、すれ違い通信を設定できたりスクリーンショットも撮れて、至れり尽くせりです。

体験版の仕様自体は褒めつつも、一言で纏めると、色々と惜しいゲームでした。
確かに「サガっぽい」けれど、ひたすら薄い印象。
「サガ」というゲームは、どちらかというと濃いゲームなので、骨格は似てはいるのに真逆の印象を受けたのが不思議です。
独自の要素があるのに、チュートリアルは最小限で、プレイヤー自身がトライ&エラーで学んでいくという不親切さは「アンリミテッド・サガ」に似てるかもしれません。これ自体は「自分で理解する喜び」も生まれるので悪いことではないと思います。
ゴーレムとの戦いで、最初は全滅させられるだけだったのが、水の精霊の取り合いをしていることに気付いてからは一気に安定して勝利できました。
ストーリーは無いも同然の薄さなので、戦闘で試行錯誤して楽しむゲームだと思いますが、その戦闘自体も掴めてくると、直ぐ飽き始めてしまうのが難しいところ。結局、3人パーティなのに完全にロール(タンク・アタッカー・サポート)の分業を強いられるため、戦いかたがシステムで強制されていて、どんな敵が出て来ても同じことの繰り返しとなり、飽きてしまいました。

「スタッフの名前で売ったゲーム」みたいな言われかたもしていますが、スタッフ陣の仕事はそれぞれ感じられます。
私はタイトルロゴデザインに「ヴィーナス&ブレイブス」監督・川口忠彦氏の名前があって気になっていたのですが、確かに要所の英字にV&Bを感じますし、関わったのはロゴだけだそうですが、イベント途中にナレーションで朗読調の説明があるのも、V&Bみたいだと思いました。
音楽は浜渦正志氏なので、いかにも氏らしい透明感のある曲調。
戦闘中の覚醒の気持ち良い演出の手応え等は、いかにもサガを作ってきたスタッフらしい出来です。
それなのに、なぜここまで手応えが薄いゲームができてしまったのか、とても疑問です。個性が個性を殺し合ったというほど主張がないので、お互いに調整し合って自然と薄まってしまったのでしょうか。
メイン武器を変えたら、下画面で表示されているキャラクターイラストも変わるとか、そういう地味なところまで凝っていて、非常に感心したんですけれどね……。

平岩弓枝著「千姫様」

家康の孫であり秀頼の正妻だった千姫を描いた作品。
千姫と侍女の三帆が共に本多忠刻を思慕して、三帆が罠を仕掛ける辺りでは、女同士のギスギスした争いになっていくのかと思ったのですが、まったく違い、純粋に、大阪の陣後の千姫の半生を描いた小説でした。

史実上は、特別大きな物事を成したということもない人で、それゆえ名前は知っていてもどう生きた人なのかまったく知らず、色々と勉強になりました。
ただ、途中まで物語の狂言回しだった三帆の存在が途中で消えてしまい、そこから先はただの事実の羅列のようにも感じられたのが残念でした。

なお、本作では淀君が普通に真っ当な人物として描かれていました。徳川第一の姫である千姫を描いた作品で、淀君に好意的な描写と出逢うとは思わなかったので驚きました。