そうだ、悪夢はいつもここから始まる。
変わらない状況、変わらない面子、変わらない科白、変わらない……結末。
力任せに振り回された刃、低い呪文の声、大地を這い襲い来る雷光、弾かれ合う剣、降り注ぐ矢の雨、だめだシャル遅いっ──!
そして僕を貫く炎の刀身。
ああ、姉さん。泣かなくていい。
分かっていたんだ。僕一人でお前たちに勝てるわけがない。
それでも、僕は戦わなければならなかった。
彼女を守る為なら、なんでも良かったんだ。
悔いはない。お前たちも同じだろう?
だから、僕はこの夢の修正を望まない。僕が選んだ道を否定しない。
愚かだと笑うなら笑えばいいさ。
だが、この瞬間こそが、僕が僕自身として生きた本当に幸せな時だった。
彼女を守って、戦って……死んだ。それが僕のすべてだった。
なぁシャル、僕は幸せだ。
英雄になどなれなくても、彼女の愛が得られなくとも、僕は幸せだったんだ。
そう、死んでから気が付いたよ。
僕を愚かだと言うならば、その幸せに気付くことがなかった、その事を指すといい。