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独白 それぞれの・ハロルド

 ねぇ兄貴、失敗したわ。
 この天才ハロルドがそう認めるんだから、本当に大失敗よ。
 どうしてこんなミスをしたのかしら。

 ソーディアンには、兄貴の人格を投射すれば良かった。
 そうすれば、私は独りにならないで済んだのに。

 ねぇ兄貴、間違ってなかったよね。
 兄貴も私も、自分に出来ることをしたんだもんね。

 阿呆な神様のせいで、私は兄貴の死を本来のそれより十二分四十五秒早く知った。
 それでも私は兄貴を助けにいかなかった。
 未来に繋がる枝葉を増やす危険性は科学者として弁えてるわ。
 それに、兄貴もそんな事望まなかったよね。
 ずっと一緒に生きてきたんだから知ってるわよ。
 他に十八の理由があるけれど、それで充分よね。

 兄貴は死んだ。
 大切な脳細胞が死んじゃうくらい頭が熱くなって、私は泣いた。
 理解して、納得してた筈なのに。

 あ、そうか。
 私は。
 兄貴の、兄さんの生きてる未来、見てみたかった、そう言うわけで……。

 我ながら馬鹿ね。
 阿呆な神様のせいで、ただ兄貴を悼んで泣いて終わる筈だった私の心は揺れている。

 ねぇ兄貴、こんな歴史は修正されるべきよ。
 私は行くわ。
 ああ、兄貴は死んじゃったから、どの時間軸に移動しても私と一緒ね。

 それだけは、少し嬉しい。