「ワンコ、男前ねぇ」
そう言いながらラピードの前に座り込んだのは、最近一行に憑いてくるようになった胡散臭いおっさんだ。
背を丸めたレイヴンと、真っ直ぐに背を伸ばしたラピードは、同じ位置で顔を付き合わせる。
おもむろに、男は右手を低い位置で持ち上げた。
「お手」
誇り高い獣は長い尾をぱたり、と揺らめかした。対する男は微動だにせず、風貌に似合わぬ鋭い眼差しでラピードの隻眼をじっと覗いた。
その時、一声吠えたラピードが奇跡のように前足を挙げた。
──掌を上にして。
間を置かず裏返した右手を乗せ、レイヴンは歓声を上げた。
「見て見て! ワンコがおっさんにお手してくれたわよ」
「あんたが、お手、させられてるのよ!」
天才魔導少女の突っ込みは今日も的確だった。