天の響

4000年前勇者御一行10のお題

戦争

 闇夜を切り裂いて数条の閃光が走る。轟音と共に砦が揺れる。目を凝らせば光の束の中に消えていく幾多の影が見えるのだろう。
 既に麾下の砲兵は数えるばかりだった。無論、撤退命令は出ている。しかし敵軍の包囲網は完成されているのだ。
 前に進み道を切り開くしかない。
「全門斉射、突撃!」
 騎士は振り上げた白刃を真っ直ぐに下ろすと、自軍から放たれた目映い輝きの後を追う形で、怒声と悲鳴が渦巻く戦場の中へと戦車を駆けさせた。
 行き先を塞ぐ邪魔な敵兵を背後から斬り伏せる。それを卑怯だとは思わなかった。

2003/11/28 初出