天の響

4000年前勇者御一行10のお題

エターナルソード

 傍らで飲み込まれた悲鳴に気付き、ユアンは我に返った。ここは足場が悪い。
「……マーテル、その、私の腕で良ければ掴まると良い」
 彼女の顔に密かな喜びが広がる。
「ありがとう」
 細く白い指が遠慮がちに添えられた。家事仕事や本来彼女にそぐわない戦いの経験が、確かに刻み込まれた手。けれど如何なる貴婦人の白魚の手よりも美しい宝だと思い、ユアンは自らに差し出されたその指先を、もう一方の手で包み込んだ。

 そんな二人が辿り着くのを待っている間。
「ねぇクラトス、このエターナルソードには時空を操る力が備わっているらしいんだけど」
「……ユアンで試すのは勘弁してやれ」
 未だ姉離れ出来ていない少年は、腰の剣を抜くべきか否か思い悩んでた。

2003/11/29 初出