少年は感嘆の声を漏らし、酷く怪しい足取りで数歩前に出た。充満する温かなものを浴びようと両手を広げ身体をさらす。歓喜した心に呼応するかのように、無数の光が浮かび上がった。虹の中にいるような、信じがたい情景だった。
「見て、すごいマナだ──」
恍惚の視線を一巡させて、それから同志の一人に目を留めた彼は我に返った。
人間である騎士は、マナを知覚できない。初めてみる豊饒なマナを前に浮き上がっていた気持ちが急速に沈んだ。
「……ごめんなさい」
零れる謝罪に、騎士は気にしていないと言うように首を振り、しかしその口唇に刻まれたのは苦い笑みだった。