己の気に、何かが染み込んでいくのをクラトスは感じていた。背中に広がる青光の翼が細波のように揺れる。 源のマナは、森の中に立つ黒い石版を残して掻き消えた。次にその力が目覚めるのは、世界が再びかつての姿を取り戻した時だろうと思われた。 急速にマナが薄れていく。やがてはこの場に精霊がいたことなど、エルフたち以外に知る者はなくなるだろう。 時空を操る力は、最早何者にも与えられない。 しかし精霊の王者は、この地への戒めと引き替えに翼を持つ瞳を手に入れたのだった。