天の響

4000年前勇者御一行10のお題

オリジン

 己の気に、何かが染み込んでいくのをクラトスは感じていた。背中に広がる青光の翼が細波のように揺れる。
 源のマナは、森の中に立つ黒い石版を残して掻き消えた。次にその力が目覚めるのは、世界が再びかつての姿を取り戻した時だろうと思われた。
 急速にマナが薄れていく。やがてはこの場に精霊がいたことなど、エルフたち以外に知る者はなくなるだろう。
 時空を操る力は、最早何者にも与えられない。
 しかし精霊の王者は、この地への戒めと引き替えに翼を持つ瞳を手に入れたのだった。

2003/11/29 初出