その名が指しているのは一体誰なのだろうとユアンは想う。 自分以外の何者かが口にするその名は、果たして同じ乙女を指しているのだろうか。同志達が呼ぶそれすら既に変質しているように感じられた。 彼にとってその名の主は女神でなく、大いなる実りとそして贄たる少女達と融合した彼女でもなく。ただ、遙かな過去確かにこの腕の中にいた愛しい── 「……マーテル」 既に喪われた、けれど何時までもユアンの中に残るだろうその名は、今尚苦く、甘い。