天の雷に撃たれ燃えるオゼット目掛け、雲を引き裂きマナが流れる。
空を駆ける機械、レアバード。但し既に豊潤とは言い難くなったテセアラのマナを食い潰すまいと言う配慮なのか、その動力は雷の精霊の荒れ狂う羽ばたきによるもの。
懐かしいマナだった。
かつて世界を変える為、精霊たちと契約を交わした。同じ路を彼らも歩んでいるのか。
――同じ路?
自らの思考にミトスは嘲笑った。
同じと言う事は到底ない。そんな甘いものではなかった。勇ましく戦うより先に飢えて死ぬ恐怖、同胞にすら理解されない孤独、身を隠して生きねばならない事の悲哀を、あの子供が知っているものか。
炎が騒々しい音を立てながら何もかもを飲み込んでいく。けれどあの頃の戦火はこんなものでなかった。
細い金糸の先が爆ぜる音に怯えて宙を踊る。そしてミトス自身は――輝石を外しただのミトスとして存在する今、炎は確かに熱を伝えている筈だったが、それはまるで感じなかった。
きっと、きっと自分の身体は疾うに氷よりも硬く冷え切っていて、熱など感じはしないのだ。どこか息苦しく感じるのだって、きっとこの煙のせいではないのだ。
それなのに何故だか眩暈がして、ミトスは飛来するマナの高まりを感じながら膝を着いた。