天の響

ミトス・ユグドラシル14のお題

ハーフエルフ

 ハーフエルフは、人とエルフの血を半分ずつ――
 無論物事はそんな単純に出来ていない。けれどハーフエルフと言うのは、そんな狭間の生き物だ。
 ゆえに、傷付いた腕から零れたその証は服を紅く染め上げていた。それは姉を殺した薄汚い人間の血、何もしてはくれぬ高慢なエルフの血。
「流れ出てしまえ」
 虚ろな響きだけが唇を潤した。
 天使化した肉体は傷みを感じない。けれど心の傷みは耐えようもなく少年を傷付け、彼だけの鮮血を噴き出している。
 癒してくれるものは、もういない。
「みんな僕の中から消えてなくなれ……!」
 後には、最早どちらの血も通わぬ冷たい人形がただ一人。

2004/10/22 初出