重ねた手紙の嵩は、もう指先ほどになる。
皺を伸ばし、丁寧に重ねていても何処か雑然として見えるのは、テセアラの貴族趣味な透かしが入った薄紙からシルヴァラント製の分厚い紙まで含まれている為だ。その事からは彼らの行動範囲の広さが知れたが、その一方で、果たしてこの使い道もない手紙の束をどう扱って良いものか、ミトスは決めかねていた。
そう間を空けない頻度でジーニアスが送ってくるその手紙の中身は、実際大した内容でない。今は何処にいる、夕食には何を食べた、ロイドがどうした……。
ミズホの忍まで使って届けられておきながら、余りに無邪気で他愛ない。旅の出来事をただあるがままに綴った手紙など、一行の内情を知る手掛かりとしては益体もない。それに、鼻の利く犬は一匹で充分だった。躾のなっていない犬は、お互いを噛み殺してしまう結果になりかねない。
だから、こんなものは別に要らないのだと思う。
けれど今日も、届いた手紙を頭から終いまで読んで、下らない内容を一字一句間違えず覚えてしまった。皺を伸ばし、順番通りに重ねる。この行動の理由はなんだろう。
分からず、ミトスはただ手紙の束を抱き締めた。