騎士の魂となるべき一降りの剣が作られた。
「これを」
指し示したミトス・ユグドラシルの腰に、もう剣はない。
対するクラトスの腰には、大戦の終結を望み振るったあの頃と同じ重みがある。それを知りながら剣を誂える意図を量り、クラトスの眉根が寄った。
「得物こそ魂と教えたのはお前だ」
剣に誓った理念の煌めきは白刃の輝きに等しく、その強さは刀身に宿り折れ曲がることを知らぬ筈だった。けれど勇者が得た精霊の剣は、最早使い手を失い、天に最も近い頂きに安置されるだけの象徴でしかない。
クラトスは理想に向け誓った剣を、何時まで研ぎ澄まし続けるのだろう。
「だから、私は新たな魂を授けよう」
もう一度指し示したミトスの指先で、遂に騎士は新たな魂を手に取った。
弟子が与え、師が受ける。その時、関係は覆された。しかしクラトスは――腰に履いた剣を捨てる事もなかった。