それは思い描いていた理想郷の縮図であるようだった。 人間とハーフエルフと、貴人と村人と、皆が彼等自身のまま対等に存在している。ドワーフでも機械人形でもそれは変わらない。温かな信頼と友愛の絆だ。 だが、とミトスは考える。 既に毒蠍は放たれた。遅かれ早かれ夢は覚め、おぞましい現実が残される。 思えば自分にだってあったのだ。まるで理想そのもののような儚い一時が。ありのままの自分を許されていた空間が。 けれど今は、記憶の彼方にしか存在しない。