笑顔は武器だ。 そう教えられたあの頃とは意味合いが違ってしまったけれど、武器は武器に違いない。 「どうかしたか?」 鳶色の瞳が覗き込んでくる、その行為に返して上頬を緩く持ち上げ目尻を下げる。こんな動作もかつてと何ら変わりない。 空気も柔らかく解けていく。 「いいえ」 ほら、簡単で何より強力な武器。けれど―― 「そっか。無理するなよ」 伝播し繰り返された邪気ないその笑顔の方が強い事に、ミトスは気付かない振りをした。