彼に向かって縋るように伸ばした、自分の手の大きさに気が付いた。
剣を握るあの手に及ばなくとも、成長したこの手は助けを乞うに相応しくない。そして、求めているものも、最早助けでない。
形だけ大人びた少年は、浮ついた手のひらをきつく握った。
かつて、彼が剣を捧げた理想と少年は同一のものだった。忠義も友愛も、疑う必要がないほど満ち足りていた。今、道を失った二人の間にあるのは形骸し、その骨すら壊死を始めた偽りの信。
どちらかだけでも残っていれば、きっとそれで良かったのに――
何処で擦れ違ったのか、自分は知っている。
彼は、幼い盟主を守りたかったのだ。
けれどもう自分は求めない。欲しいのは彼の助けでなく、ただ、その命を懸けた忠誠だ。
だが彼は本当に分かっていないのだろうか。どちらの姿であれ、少年はあの日と同じミトスであると。