捕まえた相手の姿を見て、瞬間クラトスは後悔した。 骨張った細い身体に、もうどれだけ着続けているのか分からない薄汚れた服。その手には節が真白くなるほどきつく掴んだ黒パン。どうせ盗るならばもっと美味しい物を盗れば良いのに、この子供が衝動から掴んだのは、自分が知っている食べ物だった。 人が犯罪に走るのは、貧しいからだ。 貧しい人々を罪に問うよりも、戦争や人殺し等という大罪を犯した者こそが罰せられるべきではないかと眉根を顰めたが、クラトスは結局その子供を溜息と共に衛兵に引き渡した。