天の響

クルシス20題

焦燥

「どうする……」
 隠しきれない焦りが零れると、事態がより明確に、そして緊迫した状態であると判明して、ユアンは節々が真白くなる程にきつく手を握り締めた。
「このままでは、マーテルとミトスが帰ってきてしまう!」
 指輪探索開始から既に三時間。成果はまるでない。
 忽然と消え失せた大切なものの事を想うと、気持ちばかりが逸る。
 その姿を見掛けたクラトスは何かを言いかけて顔を持ち上げ、不意にその口を噤んだ。どうした、とユアンが問うよりも早く。
「どうしたの?」
 背後から掛けられた声に、ユアンの動きが固まった。

2003/12/18 初出