「僕は優しいからね」 支配者は笑みを浮かべた。 しかしそれは石像の女神と同じ、ただ美しい顔でしかない。生身の女達のような媚びはなく、可愛らしくもなく、欲望もなく、慈愛もない。 「忠誠か、死か」 そして支配者は、ゼロスの前に真っ直ぐ敷かれた道を二つに割ってみせた。 「選ばせてやるよ、お前自身に」 ――抗えぬ運命だと思えば、肯定出来たのに。