• カテゴリー 『 ダンス・ショウ 』 の記事

劇団四季ミュージカル「コンタクト」@自由劇場、13時回を観劇。
自由劇場は、500席程度の小ホール。2階席は割と急斜面で、前の人が邪魔になる事はありません。お手洗いが女性1階、男性2階で一カ所ずつしかないのは、収容人数から考えて妥当なのかな。動線は良く出来ていましたが、最近では珍しい全和式便座には驚かされました。

3短編オムニバス形式のダンス+芝居の公演。
秘かに高倉恵美目当てだったのですが、行ってみたら別キャストだったため、テンションが多少下がった中での観劇になってしまいました。
開演前のアナウンスが小粋なジョーク混じりで良かったです。ああ言うアナウンスだと、真面目に聞く気がおきますね。
Part1→2→3の順で、段々盛り上がって面白くなっていった感じですね。

実験的ではありますが、一幕は基本バレエ、二幕はスウィングの振り付け中心なので、動きとしては普通に安心して観れました。また、やはり男性ダンサーの力強さに感嘆しました。跳躍や様々なリフトなどは、流石ですね。
ただ、静止がびしっと止まっていなかったり、回転の軸が綺麗でなかったりと、少しずつ気になるところもありました。

以下、Partごとに本日のメインキャスト配役と感想。

Part1 SWINGING

ブランコに乗る女:井上佳奈
貴族:花島佑介
召使い:徳永義満
ブランコを漕ぎながら、絡みを思わせるエロチックな振り付けで踊る短編。
主人と召使いが入れ替わる「貴族遊び」だったと言うオチはある意味安心したけれど、最後の台詞「上出来だ」と言う意図が分からず、釈然としませんでした。
3人だけで照明演出などが付いていないので、アクロバティックダンスショウとしても物足りなかったです。

Part2 DID YOU MOVE?

妻:坂田加奈子
夫:牧野公昭
ウェイター長:金久烈
コメディチックな部分もあり、面白かったのですが、ラストの救われなさ感に閉口しました。
妻が白昼夢で勇気を得て、関係を変える一歩を踏み出すのかと思いきや、結局萎縮してしまい、しかももう夢の世界へ飛び立てないと言う絶望感が残るばかり。
ダンスの方は、妻が一人で踊っている時点は少々退屈でしたが、ウェイター長とのデュエットから面白くなり、総踊りは楽しめました。恐らく、ソロの時は後方で小芝居してる人々と踊っている妻が、スポットライトなどで区別されないので、意識が散漫になってしまうのでしょう。照明を使わないのは演出意図もあるのでしょうが、どこを見せたいのか読み取れませんでした。
帰宅してからプログラムを読んで「夫も実は妻を愛していると言う解釈も出来る、と言うとブーイングを喰らうか(意訳)」と言う下りに驚きました。私は普通に、コンタクト下手な夫婦の話なのだと思っていました。少なくとも夫の方は、母親が認めていないらしい女を、一片の好意もなしに妻にする必要がないのですし、ドレスを褒めたり、お気に入りのカフェを予約したのも、愛情ではないのかな。だから二人が一歩ずつ勇気を出せば、違う関係を作れそうなのに、ともどかしく思ったのですが……。
ただの暴力夫の話だったんだとすると、余計に辛いです。

Part3 CONTACT

マイケル・ワイリー:加藤敬二
バーテンダー:牧野公昭
黄色いドレスの女:酒井はな
マイケル役の巧さに完全に惹き込まれました。一人だけ芝居のレベルが違ったと思います。喋り方、動きに、精神を病んでいるらしい説得力があったのと、四季の舞台なのに台詞回しが自然で、非常に気持ち良く観る事が出来ました。
黄色いドレスの女は、台詞に情感がなくて逆に凄いですね。普通の役でこの調子で話されたら嫌ですが、電話の「階下に暮らすミネッティ」の声としては最適だったと思います。
お話としては、自己肯定による再生と言うありふれた内容のため、物語はPart2の方が深い気もしますが、ハッピーエンドな分こちらの方が良い後味で良かったです。
なお、二部の夫と三部のバーテンが同じ役者であることは、カーテンコールで気付きました。精神科医の声とバーテンの声の使い分けも格好良かったです。

作品全体の感想としては、日程をやりくりして無理に見に行った分、やや不満です。
そもそも、作中に歌は一切ないのに本作が「ミュージカル」と分類されているのは、この作品がダンスショウではなく物語だと言う事だと思います。
ゆえに、ダンスを上手に踊っても、そこに芝居がなければ、振り付けから読み取れる情報しか観客には判らず、ぼやけた印象になるのでは。
私のダンス理解力が欠けていると言う要素も勿論あるのでしょうが、その物語世界に客を引き摺り込む問答無用の表現をして欲しかったです。