• 2015年05月登録記事

TVアニメ「アルスラーン戦記」9話「仮面の下」
http://www.arslan.jp

エンドカードは伊奈めぐみ先生。ご自分の作品と巧く掛け合わせた上で勢いのある1枚でした。

今回は、原作小説からの改変のみならず、漫画版のオリジナル展開を更に改変していた点が非常に気になりました。
下手に展開を弄って引き延ばす意味がわからないし、もう少し情報量を詰め込んでも良いのでは。台詞の変更やカットで、伏線が消えた箇所もありましたよね。
ただ、色々思ってしまうのは漫画版を読んでいて、そちらと直接比較してしまうせいかもしれません。次話はまだ雑誌連載分があるけれど、次々回からは漫画版という一方の原作がなくなり、小説部分からアニメスタッフが書き出して行くことになるので、いっそその方が楽しく視聴できるかもしれない、と期待しています。

全体的に作画が崩れていたのは、終盤に設けられている銀仮面卿戦のクオリティと引き換えだったのだと納得しました。見ている側としては、全体のクオリティが高い方が嬉しいですけれど、制作現場は大変なんでしょうね。
なお、今回も夜間の戦闘ですが、「王都炎上」に比べると全体的に明るめになっていて、見やすくなっていたのは良かったと思います。もしかすると、屋内と屋外の差を出していたのでしょうか。

イノケンティス七世は元々“萌えキャラ”だと思っているのですが、動いたり喋ったりしているとより可愛かったですね。癒されます。

日誌を書こうとしたら地震があったので、慌ててコンピューターの電源を落としました。広範囲に渡る揺れだったようですが、マグニチュードの割に震度はそこまで大きくなくて安心しました。

コリー・ウィルス著 大森望訳「ザ・ベスト・オブ・コリー・ウィリス 混沌ホテル」

中・短編SF集。
最初が表題作「混沌ホテル」ですが、これが一番困惑する作品でした。訳者後書きには下記のように記載されていて、正にこの通り。

量子論をマクロレベル(というか、日常生活)に適用した“見立て”のおもしろさがミソなので、そこがぴんと来ないとどこがおもしろいのかよくわからないーーというか、隔靴掻痒の気分を味わうかもしれないが、なんとなくサイセンスをネタにしているらしいハリウッド観光コメディだと思って読んでも、けっこう楽しめるんじゃないかと思う。

私は、まず量子論というもの自体がぴんと来ないし、キャラクターにイライラするし、という具合で楽しめなかったですね。
そのせいで、残りの4作は読まずに止めようかと思ったくらいです。
でも結論から言うと、私が面白くないと感じたのはこの1作目だけで、あとは面白かったのでした。

ガラッと印象を変えたのが2つ目の短編「女王様でも」。
なんと、月経をネタにした作品というアイデアの段階で脱帽。結局、なにが起こるという話でもないのですが、女同士の会話の応酬が面白かったです。現代でも「健康のためにはピルを飲んだ方が良い」という人と、「自然に反している」という人とがいますから、現代女性にとってもリアルなお話ですね。

中編「インサイダー疑惑」はインチキ霊媒を暴くデバンカーの話。
SFというより、どちらかというとミステリ仕立てで、懐疑主義者の男が美人助手と霊媒を見に行くと、お定まりの「アトランティスの大神官」の降霊をやっているが、突然雲行きが変わり……という導入。
この導入で、いかに観客を騙すかという詐欺の技術が語られているのがまず面白いし、テーマとなるヘンリー・ルイス・メンケンという人物が実に振るっています。私はメンケンについてまったく知らなかったのですが、彼の金言を読むだけでも興味が掻き立てられますから、その「本人」が登場するとなれば、面白さは保証されたようなものでした。

短編「魂はみずからの社会を選ぶ -侵略と撃退:エミリー・ディキンスンの詩二篇の執筆年代再考:ウェルズ的視点」は、ディキンスンの詩を論文仕立てでSF的解釈したコメディ。
最初困惑したけれど、受け取りかたが分かったら笑いっぱなし。こういうお話のスタイルもあるのか、と驚きました。

中編「まれびとこぞりて」は、宇宙人との交流を描いたお話。私は聖歌の知識があり、歌がある程度わかるためそれなりに面白かったけれど、人の話を聞かない人間が出てくるので疲れました。
でも、先方からアプローチしてこない宇宙人とのコミュニケーションを模索するという視点は面白かったです。

全体的に、女性作家ならではのSFなのかもしれません。体験を巧みに折り込んでいたり、ユーモアに溢れていたり、なかなか楽しめました。
それだけに、表題作が一番評価の難しい、読む人を選ぶ作品だった点が残念だなと思います。

TVアニメ「うたわれるもの」5〜8話感想
http://www.imagicatv.jp/content/utaware/

蜂起が4話、攻勢に転じるのが6話、首都陥落が7話というハイスピード展開でした。と言っても、キャラクターのやりとりにたっぷり尺を取って、戦闘はサクサクという作りだったので、展開は早くても丁寧に進んでいると感じます。
それに、皇都を攻める戦いはしっかり描写されていました。さすがに、CGであることが丸わかりな兵士のシーンも多かったですが、この辺の熟れていない感じは昔の作品ならではで、今となっては「味」という気もしますね。

ただ、中ボスというべき皇インカラが、ササンテの色違いキャラで、明らかに無能なキャラクターであったことが残念でした。
暴虐ではあるけれど、それ以上に愚かなので、怖さよりも阿呆だと判断できてしまい、ハクオロたちが負ける未来が想像できなくて緊張感がなかったし、仕えている人物が無能だということで、ベナウィの格も下がると思いました。

ちなみに、ベナウィが主人公側に付くことはOPの時点で分かっていたのですが、思ったよりアッサリ従ったので拍子抜け。この人は要するに、義務感が強いだけなのかな、と感じてきました。もし在野武将だったら、日々を無為に過ごすタイプかもしれません。とはいえ、職業軍人としてちゃんと強さが描写されていて、ハクオロが武術でも勝ってしまうような主人公補正をされていないことに安心しました。
そういえば、ベナウィに関して個人的に気になった点があるのですが、彼はもしかして、オボロのお母さんなんですか?(笑)
「精進しましたね」という台詞に、親目線を感じました。例えば、クロウだったら「腕を上げたな」と言うところですよね。ライバル(対等)ではなく格下に見ているんだろうけれど、妙に身内感覚だと思います。

8話は平和な日常のエピソードで一息つく感じでしたが、次回予告を見る限り、あっという間にフラグ回収で戦争が始まる模様。
そうそう、この作品は次回予告にナレーションがないので、毎回展開が読めなくて面白いと思っています。例えば、予告の段階では、カミュは周りを引っ掻き回すタイプだと想像していたのですが、どちらかというとアルルゥに振り回される、予想外に可愛いキャラだったりしました。

最後は余談ですが、PSP版「うたわれるもの PORTABLE」廉価版が、70%OFFセールだったので、さすがにこれは安いと思って買ってしまいました(セールは6月2日まで)。
戦略シミュレーションは、買ったら満足してしまい、多数積んでいるので、いつプレイするかは不明です。

朝井リョウ著「チア男子!!」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
大学生の晴希は、幼馴染みの一馬から「晴希の応援には力がある」と乞われたことを切っ掛けに、男子のみのチアリーディングチームを始めた。やがてそれぞれに事情を抱える男子たちが集まり、全国選手権を目指して一致団結していく。

この作者の代表作と言えば、デビュー作の「桐島、部活やめるってよ」か、直木賞受賞の「何者」ですよね。そちらを読んでいないのに、この作品を読むのか、という躊躇はあったのですが、先に上げた2作はタイトルの時点で「虐め問題とか書かれていそう」というマイナスのイメージがあり、実際は全然違うテーマだと分かっていても、あまり興味が持てなかったのでした。
それに対して、本作は題名を見た瞬間「男子がチアをやる青春もの」と想像できて、気軽に手に取ることができました。
そして、想定通りの展開で、想定内のストーリーが描かれ、想定内の面白さで満足して終わりました。
良い意味でも、悪い意味でも、漫画やアニメ的なお話だと思います。

チアリーディングを描くため、作中には技名などが多数出てきますが、巻頭に「チア辞典」という絵付きの解説が有り、なんとなく掴めます。
ただ、私自身がそもそも運動音痴なので、あれこれ書かれていても最終的な演技構成はイマイチ分からなかったのが残念でした。そういう意味では、漫画化されているのも頷ける展開です。

十分面白かったのですが、欠陥は、チームメンバーだけでも16人という登場人物の多さでしょう。
しかも、お話の視点は晴希だけでなく、チームメンバー内で何度も入れ替わります。キャラクター数が多いアニメが、話ごとに焦点となるキャラクターを決めて話を展開するのと似ています。
これが、初期の7人ならば色々な視点で話を楽しめるのですが、16人に膨張すると少し混乱してきます。もちろん、「金銀銅」や鍋島兄弟のようにある程度まとまった単位で扱われるキャラクターもいるのですが、チームメンバー以外にもキャラクターがいるわけなので、多いことは間違いありません。
恩田陸著「ドミノ」(2014年3月28日記事参照)で、27人を7前後のグループに纏めて動かしていたのと逆のアプローチですね。
ただ、各登場人物は、戯画でいて、男性作者が描く同世代の男性像らしいリアリティもあるので、人物像自体はちゃんと掴めます。特に、溝口のキャラクターは登場時から面白くて、ニヤニヤしながら読みました。

畠中恵著「アコギなのかリッパなのか -佐倉聖の事件簿-」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
21歳の元不良・佐倉聖は、腹違いの弟を養う大学生にして、元大物政治家・大堂剛の事務員である。養育費を稼ぐため、大堂の弟子筋の議員から持ち込まれた陳情・揉め事等の後始末を推理と行動力で解決して行く。

主人公が若くして「出来過ぎ」だったり、会話のノリが軽いという点で、好みに合う合わないはあるでしょうが、ユーモア溢れる日常ミステリで面白かったです。
読み終わって、政治家に対して少し好意的な気持ちになるお話というのは珍しいですね。
ということで、オヤジこと大堂剛、加納、沙夜子など複数の政治家キャラクターが登場します。個性派で良い面も悪い面もある強烈なメンバー揃いです。特に主人公と一番良く関係する大堂と、一癖ある加納が良いキャラクターでした。
彼らについて特定のモデルは思い浮かばなかったですが、それは作者の造形が巧いというより、現代はこんな大物政治家がいないということかなという気もしました。

宝塚を観る人間としては「贔屓のトップの、引退公演中」という下りに引っ掛かったり、政治家はファンクラブ会員ではなく劇団の「お客様」になるのでは……と思ったけれど、重箱の隅です。