• 2016年06月登録記事

三浦哲郎著「忍ぶ川」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
作家を志す学生の私は、小料理屋の女中・志乃と出会う。私は兄が失踪したこと、志乃は色町で育ったこと等、複雑な家庭環境を打ち明け合う内に打ち解け、私は志乃にプロポーズする。やがて、家も父も失い一家離散した志乃を連れて、私は郷里へ戻り祝言を挙げた。翌日、新婚旅行へ向かう電車の窓から私の実家を見た志乃は自分の家が見えると喜んだ。

表題作含む7作を収録。その内の5作「忍ぶ川」「初夜」「帰郷」「恥の譜」「幻燈書集」は関連作。
「忍ぶ川」は、主人公たちに重苦しい設定はありつつも、若者特有の明るさ、未来への希望が漂っています。
淡々としたお話ながら、志乃がとにかく愛らしい娘なので、彼女を愛する主人公の気持ちに寄り添えます。それ故、ラストシーンで、自分の家(帰る場所)を手に入れた志乃の喜びを感じ取ったときが、非常に気持ちよかったです。
名作だと思いました。
「初夜」は、「忍ぶ川」から連続した時間軸のお話だったので、少し驚きました。内容は、血を否定していた主人公が子供を望むようになる救済の物語なので、続編として素直に読めました。
しかし「帰郷」以降の話は主人公達から若さ(明るさ)が失われ、設定の暗さがどんどん比重を増します。十分読ませるお話ですし、考えさせられるけれど、設定の重苦しさがそのまま伸し掛かってくるため、楽しくはありません。
また、不幸自慢も鼻につく気がします。せめて主人公が真面目に働くとか、もう少し努力の人なら清貧と言えるのですが。
短編を読み進めるほどに、「忍ぶ川」読了後の清涼感がどんどん失われていくのが残念でした。

「帰郷」の後に収録されている「團欒」も、最初は“私と志乃”の物語の一つかと勘違いしたくらい、似たような設定の主人公と妻が登場する私小説になっています。
しかし夫婦の関係性が異なるので、違和感がありました。“私と志乃”の純愛も、未来にはこうなるという昏い暗喩なのでしょうか。

最後に収録された「驢馬」はガラリと雰囲気の違う、満州留学生の話です。
戦中の人間模様に鬱々とさせられ、訴えかけるものが強くて、重苦しくも胸に響く作品でした。

春のクール終了ですが、視聴作品が両方とも連続2クール作品なので、番組変更の時期という自覚が薄いです。

Re:ゼロから始める異世界生活(10〜13話)

http://re-zero-anime.jp

なんと、今月は一度もスバルが死んでいない……!
しかし死んでリセットした方が良いのでないか、と思ってしまう状況で6月が終わりました。ほんの2週間ほど前には、ベストな状態だった筈なのに、天国から地獄への落差が激しいですね。

人知れず苦労を積み重ねたスバルの気持ちも分かるけれど、エミリアの立場や気持ちを考慮しようとせず、自分の好意を押し付けている時点で、同情はできません。
王選候補者の所信演説は、誰も彼もどうしようもないですね。
実際のところ、王国をどう導くつもりか語ったのは、クルシュとフェムトだけですね。エミリアですら、王としては相応しくないように思います。

機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096(10〜12話)

http://www.gundam-unicorn.net

今回、アバンで「前回までのお話」がない話がありましたが、UCを観るぞ、という気持ちの盛り上がりが薄く感じました。あればあれこれ言うくせに、実際になくなると、今度は寂しいのだから、視聴者とは勝手なものです。
噂のリディがバナージの代わりにロニを撃ちましたが、軍人である以上、当然のことかな……と思います。取り敢えず、まだ嫌いにはなっていません(笑)。

実は、先月末からもう一本見ていました。

ふらいんぐうぃっち(8話〜12話)

http://www.flyingwitch.jp

初めての「日常系アニメ」。

明確なストーリーがないと見ていられないのでないか、と思っていたのですが、意外と面白かったです。コメディというほど笑うわけでもなく、考えさせるでもなく、ただほのぼのとストレスなく温かい気持ちで視聴できます。
よく考えたら、自分自身、ヤマもオチもない短編を良く書いているので、ジャンル的には合うのかもしれません。また、たんなる学生の日常ではなく、魔女ということでファンタジーが含まれているのも良かったです。
真琴のテンポのトロさは、たまに合わないと思ったけれど、悪い人物が出て来ず、テンポもゆったりしているので、一週間の終わりだとか、疲れているときに良いアニメでした。

南伸坊著、南文子写真「本人の人々」

雑誌「ダカーポ」の連載「本人だもの」をまとめた一冊。
「ヒトの身になって考えてみよう」と思った著者が、「本人術」と名付けた顔真似で、実際にその人物になってみて文章を書くという、かなり揶揄った本ですが、面白いです。

どの人物も、どことなく似ているので唸ります。
鳥越俊太郎氏、猪瀬直樹氏あたりはベースが元々似ているのかな?と思ったけれど、チリ人妻アニータや瀬戸内寂聴氏など、性別が違っても似ていると思えます。

南伸坊による宮崎駿

ポーズや角度などの写りかたも工夫しているのでしょうけれど、相当、相手を観察しているのでしょうね。
文章も、軽く毒が含まれているけれど、他人からすれば「その人物が言いそう」と思える内容が多いです。特に、叶美香は、本人が過去に仰有った発言を持ってきたのではないかと思うくらい傑作でした。
正直、GACKTなんかは、写真は表情しか似てないのですけれど、ああ成程と思ってしまうのが面白いです。

いわゆる「時の人」が多いので、何人か元の人物を思い出せない人もいましたが、大いに笑わせてもらいました。

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感想を書くのが遅れましたが、アニメ「BROTHERHOOD FINAL FANTASY XV」2話(Dogged Runner)も見ました。
http://www.jp.square-enix.com/ff15/brotherhood/

尺は15分弱しかありませんが、きちんと起承転結があり、少年期から今に至る時間の経過が見えて面白かったです。

これまでの動画等から、プロンプトは根から軽薄なムードメーカーだと思い、興味を持っていませんでした。しかし、元は友だちのいない少年だったのが、体型と性格を改善して今の彼になったんだと分かり、好感度が上がりました。
ルナフレーナの手紙を箱の中に仕舞い、たまに匂いを嗅いだりするという微妙にリアルな気持ち悪さだとか(笑)、ノクトの「重い」という発言で勝手に思い込む面倒臭さなど、人間付き合いの経験値が足りない雰囲気等、かなり思い切ったキャラクター像ですよね。
でも人付き合いの悪い少年期も、放っておかれるだけで、苛められてはいないところに、FF15世界の優しさを感じました。
一軒家にほぼ一人で住んでいるような描写だったので、育児放棄されていたのではという不安はありますが……

ただ、物語は面白かったのですが、世界観には少し不安も。ゲームPVにあった新宿関係はSF寄りに見えるからあまり気にならなかったけれど、ごく普通の日本の学校と白人のキャラクターは融合していないと思いました。

それと、今まで気にしていなかったけれど、アニメを見る限りルナフレーナはノクティス達より年上みたいですね。
1、2歳より明確な年の差がありそうで、これも珍しい設定だなと思いました。