五十音順キャラクター・ショートショート【け】
→ルールは2012年12月17日記事参照
敬虔な信徒であるほど、差別意識は根深いらしい。
教会の片隅で跪いた数分の間に、彼女の耳を見咎めた人々が顔をしかめたり慌てた様子で場所を変えて、周囲は不自然な空洞になっていた。
一年前を考えれば、捕まえられたり追い出されないだけでも驚くべきことだ。
ケイトはそう思い、際限なき己の欲を戒めた。
世界の統合から時をおかず神子と教皇の共同宣言が行われ、ハーフエルフへの弾圧は撤回された。勇者ミトスがハーフエルフであったことも公になり、教会は、ハーフエルフを騙る悪しきディザイアンこそ、人とエルフとその狭間の者を引き裂く悪魔だと断定した。
最早、ハーフエルフだからといって研究所の奥底で密かに呼吸する必要はない。彼女たちは街へ出て、人と同じように暮らすようになった。
けれど、それは教皇の本心でないのだろう。未だに我が子の面会も許してくれないのだから。
ケイトは祭壇に立つ父の姿を、末席からじっと見つめ続けた。
どんなに否定されても、彼女は父を愛していた。それこそ、この教会に集まったすべての教徒が女神へ捧げる信仰よりも深く。
敬虔な信徒のように
……ケイト(ゲーム「テイルズオブシンフォニア」)
なんとか滑り込みで、今年最後のSS更新にTOS新作を持って来ました。
ケイトは、「ファンダムvol.2」のクラトス編で破格の扱いがあった割に「ラタトスクの騎士」では名前すら登場しませんでしたね。どんな風に統合後の世界で過ごしているのか、少し気になる人でした。