• 2016年06月21日登録記事

松宮宏著「まぼろしのパン屋」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
趣味が高じて「パン屋になりたい」と言う妻を持つ高橋は、ある日見知らぬ老女からパンを貰い、その味に感動する。しかしパンの袋にあった住所を調べたところ、その店は高橋の勤め先である不動産会社の地上げに反対していたパン屋で、しかも店主は5年前に亡くなっていた。亡くなった店主に導かれた高橋は、店を買い取り、妻とパン屋を再建する。

表題作「まぼろしのパン屋」の他、2作収録。
粗筋にまとめてしまうとパン屋の話に終始してますが、実際は宅地開発反対運動から始まり、その後はサラリーマンの悲哀を語っていて、なかなかパン屋は出てきません。タイトルの意味を不思議に思いつつ、軽妙な形に惹き込まれて読みました。

少々、時系列等で混乱する部分はありましたが、大人向け童話という雰囲気で、さらりと読めます。
ファンタジック過ぎるきらいがあるけれど、とても優しい世界観でほのぼのしています。ただ、3作とも同じテイストなので、2作目、3作目は二番煎じでつまらなく感じました。

2作目「ホルモンと薔薇」は、なんとなくゴチャゴチャした印象。

3作目「こころの帰る場所」は、1作目と同じ作者が書いているとは思えない、堂に入ったヤンキー物でした。この幅の広さは凄いと思います。ヤンキーの更生もので終わってしまうのが、物足りない気もしました。