朝井リョウ著「チア男子!!」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
大学生の晴希は、幼馴染みの一馬から「晴希の応援には力がある」と乞われたことを切っ掛けに、男子のみのチアリーディングチームを始めた。やがてそれぞれに事情を抱える男子たちが集まり、全国選手権を目指して一致団結していく。

この作者の代表作と言えば、デビュー作の「桐島、部活やめるってよ」か、直木賞受賞の「何者」ですよね。そちらを読んでいないのに、この作品を読むのか、という躊躇はあったのですが、先に上げた2作はタイトルの時点で「虐め問題とか書かれていそう」というマイナスのイメージがあり、実際は全然違うテーマだと分かっていても、あまり興味が持てなかったのでした。
それに対して、本作は題名を見た瞬間「男子がチアをやる青春もの」と想像できて、気軽に手に取ることができました。
そして、想定通りの展開で、想定内のストーリーが描かれ、想定内の面白さで満足して終わりました。
良い意味でも、悪い意味でも、漫画やアニメ的なお話だと思います。

チアリーディングを描くため、作中には技名などが多数出てきますが、巻頭に「チア辞典」という絵付きの解説が有り、なんとなく掴めます。
ただ、私自身がそもそも運動音痴なので、あれこれ書かれていても最終的な演技構成はイマイチ分からなかったのが残念でした。そういう意味では、漫画化されているのも頷ける展開です。

十分面白かったのですが、欠陥は、チームメンバーだけでも16人という登場人物の多さでしょう。
しかも、お話の視点は晴希だけでなく、チームメンバー内で何度も入れ替わります。キャラクター数が多いアニメが、話ごとに焦点となるキャラクターを決めて話を展開するのと似ています。
これが、初期の7人ならば色々な視点で話を楽しめるのですが、16人に膨張すると少し混乱してきます。もちろん、「金銀銅」や鍋島兄弟のようにある程度まとまった単位で扱われるキャラクターもいるのですが、チームメンバー以外にもキャラクターがいるわけなので、多いことは間違いありません。
恩田陸著「ドミノ」(2014年3月28日記事参照)で、27人を7前後のグループに纏めて動かしていたのと逆のアプローチですね。
ただ、各登場人物は、戯画でいて、男性作者が描く同世代の男性像らしいリアリティもあるので、人物像自体はちゃんと掴めます。特に、溝口のキャラクターは登場時から面白くて、ニヤニヤしながら読みました。

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