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宝塚宙組「クラシコ・イタリアーノ/NICE GUY!!」15:30回(東京公演初日)を観劇。
初日とは言え、既に本拠地で完成できたものをそのまま持って来た感じで、危なげのない滑り出し。
これから1ヶ月、週末は基本的に通う予定です。

芝居の演出変更は1ヵ所。
ミーナが祖母に電話するシーンが1回増えて、サルヴァトーレの番組撮影の前に報告電話をする形になっていました。「クラーク・ゲーブルと共演なんてまだまだ」と笑う台詞を此処で言ってしまったので、その次のCMガール起用を報告する時はどうするのかと思ったら「ハンフリー・ボガートと共演」になっていました。
こちらの方が受けていたのは、「カサブランカ」効果でしょうか?

レニーは冒頭のアドリブを封印したのか、「ルドルフ・ヴァレンチノに似てるけれど」だけでした。その代わり、冒頭の「皆さんごきげんよう」に「初日にようこそ」が付け加えられていました。

ということで、まず「クラシコ・イタリアーノ」。
宝塚大劇場での初見時は、サルヴァトーレとマリオの別れに物語のカタルシスを感じたのですが、今日はアレッサンドロとの和解部分がちゃんと物語の盛り上がりになってると思いました。
ここで演じられる職人のインタビュー風景も凄く好きです。
今公演で退団するミゲル@光海舞人が大トリなのも嬉しいけれど、内容としてはサルヴァトーレのやり方(職人作業の分業)を肯定するニーノ@月映樹茉の台詞が好きですね。
喋っている以外の子たちも、仕事を和気藹々とこなしてる感があって、「グランチェロ」が良い職場だと分かるのが嬉しいです。

今日は9場を観て、マリオが辞職した理由は、ジュリアーノの圧力やグランチェロの路線変更より、ベッピーノの「お金は大切だ」発言が痛かったためかもしれない、と感じました。
弟の家族に良い暮らしをさせたいという希望を聞いている間の表情が、とても辛そうだったのです。そして、その言葉にはまったく返答しなかったことも、気になりました。
サルヴァトーレとの別れで告げる「一番大変な時にすまないと思っている」が本当の気持ちなのだとすれば、機械化とサルヴァトーレの本心は違う、とマリオは分かっていて、彼を助けるつもりで米国側に抵抗していた、という考え方もできますよね。
彼の職人意識が強いのは確かですが、元々、大衆向けに既製服を作るという夢に乗ってローマまで出て来て、ずっとグランチェロにいたのだから、分業制には反対ではなかった筈です。「アメリカ進出に無理をしている」のが彼から観てネックだったんじゃないでしょうか。
もう一つ、別の考えとして、マリオは「アレッサンドロになりたかった」のかな、とも思うのですが……その解釈はまた次回観直してからにします。

今日はいきなり泣いてしまったのが、子供時代のサルヴァトーレがアレッサンドロに引き取られるシーン。
施設の職員から目の前で人として否定された少年が、居場所を貰った瞬間の感情の爆発が、非常に心に押し迫って来ました。
今からこんな地味なシーンで泣いて、私の涙腺は大丈夫でしょうか。

細かい所では、仮面劇の間、後ろでピザを食べているサルヴァトーレの芝居に瞠目しました。
勿論本物ではなく、作り物のピザ。それをちゃんと咀嚼して飲み込み、店主に「美味い」と伝えている細かさが好きです。当たり前の演技だけれど、ほとんど客の目が向いてなさそうな時に、こんな動作をしている「自然さ」の作り込みが好きです。
DVDに映るでしょうか。ちょっとだけ映り込みを期待します。

その他、一部キャスト評。
ジャコモ@十輝いりすが、ライバルとして成長してきていました。
身長の大きさも生きて、出番は少なくても強烈に印象づけできていたと思います。
ジョルジオ@凪七瑠海は、線の細さで若く見えるのがマイナス要因ですが、時折クールなジャーナリストの視線で周囲を俯瞰しているのが、役を巧くモノにしてるなと感じました。
ロレンツォ公爵@鳳翔大は、貴族的な品の良さ、鷹揚な感じ、色気、の3種が巧く合っていて、出番や台詞は少なくてもちゃんと存在できていました。
ロナルド@鳳樹いちの足を組んで座る姿だけで、やり手だけど厭な奴という雰囲気が滲み出ていて最高でした。
オープニングナンバーで、スーツの星吹彩翔が素直に格好良くて思わず注目しました。

今日は結局真ん中周辺を観てしまったので、次回以降はパーティの客などに注目していきたいです。

続くショー「NICE GUY!!」は、開幕が少し遅れたのか、ちょっと早巻きで、その分テンポが良くなっていたかも知れません。
一番不満だった「Young Blood(イケメンオークション)」は、完全にギャグで勝負するように変えたようで、笑って過ごせるようになったので私としてはOKになりました。
ノリはとにかく最高の状態で来ているので、ガンガン手拍子を入れて、客席が盛り上がっていく方向で楽しむべきですね!

あ、あと私は藤井先生の衣装センスと合わないと明言していますが、馬2人は結構好きです。

宝塚大劇場公演「クラシコ・イタリアーノ/NICE GUY!!」11:00回を観劇。
所用で大坂まで行ったので、初日は逃しましたが、しっかり観て来ました。

一幕がミュージカル「クラシコ・イタリアーノ −最高の男の仕立て方−」。
期待値を越えた出来で大満足しました。観劇後にとても気持ちよくなれる、良い作品です。
とてもオーソドックスで、奇を衒った演出があるわけでなく、割と淡々と進みます。
でもテーマはちゃんと伝わってきて心に残るし、登場人物たちが自分の筋を通していて、他者を一方的に攻撃することがなく、主要人物は作中に人間的成長を遂げ、人間讃歌に溢れている。コメディ部分には思い切り笑って、スーツ姿の男役勢の格好良さに痺れて、職人たちの想いに涙して、ラストはほっこりする……。
それで充分でした。
過去の植田景子先生には「小劇場サイズは佳作、大劇場はイマイチ」という評が付いて回っていましたが、今回は過去の作風を保ったまま、「こういう地味な作品でも大劇場で見せられる」と証明したように思います。

大空祐飛主演作なのに、戦争はなく、人死にがなく、不倫もないと言うだけでも、個人的には凄く嬉しかったですけれどね(笑)。

キャストごとの細かい感想は東京公演になってから書こうと思いますが、甘口辛口でそれぞれ1つだけ。
まず、絶賛したいのはマリオ@北翔海莉。難役をしっかり見せるさすがの技巧。サルヴァトーレとマリオの間に、これまで一緒に過ごして来た時間が確かに感じられ、別れのシーンには泣かされました。ナポリに戻ったサルヴァトーレは、マリオと再会して、また一緒に飲みに行ったりしている筈だと心から願います。
次に、辛口がジャコモ@十輝いりす。引き出しにない役を演っている感がありました。もっとサルヴァトーレを追い詰めるような怖さが欲しかったです。悠未ひろと逆の配役の方が合っていたかも。東京までにもっと大きく、迫り来る恐怖が出てくることを期待しています。

あ、冒頭のレニーのアドリブは「倉岡銀四郎」で「肉喰わねぇか、こら」でした。

二幕がショー・アトラクト「NICE GUY!! −その男、Yによる法則−」。
普通に良いショーなのですが、期待値が高過ぎたせいで、なんとなく肩透かしでした。

前回の「ルナロッサ」が月+中近東というテーマで、全体的に一つの作品になっていたのに対し、あれこれ要素が詰め込まれていて少し散漫な印象も受けました。
「Yearning(プロローグ)」が思ったほどキャッチーでなくて、続く「Young Blood(イケメンオークション)」もコメディさ加減が苦手な雰囲気で盛り上がらないまま観ていたところに、「Yaw(薔薇)」で突然圧倒され、洒落た「Yellow jacket(中詰)」になって楽しくなり、「Yonder(風)」に感動。「Yawp(セクシャル9)」でテンションが最高潮に盛り上がり、ところが大階段前のフィナーレに突入するとまた地味な印象に戻って、デュエットダンスがないままパレードに突入で、なんだか気付いたら終わりになっていた、という感じです。
まだ始まったばかりなので、プロローグとフィナーレはもっと良くなると期待しています。
イケメンオークションだけは、私の好みと懸け離れているので難しいな……。

ショーに対して微妙な印象を抱いた原因の一部は、衣装にあるかも知れません。
「Apasionado!!II」で、藤井先生の衣装センスは私の好みと合わないと感じていたのが、今回で決定付けられました。
男役の魅力を出すショーと銘打つなら、黒燕尾が欲しかったです。

でも、期待値が異常に高くなり過ぎていただけで、思い返してみると普通に良いショーなんですよね。
特に好きなシーンは、「Yaw」と「Yonder」です。
「Yaw」は耽美の世界。伯爵夫人@美穂圭子の高低自在な歌、少女@すみれ乃麗の可愛さと、一瞬だけ観られる軍帽を被った姿の不思議な怖さ、ナイスセクシャルY@大空祐飛から漂う謎のエロオーラ、そして彼等に翻弄され、最後は逆様に張り付けられる逃亡者@凰稀かなめ、とすべての要素に酔いしれました。
ただ、薔薇の花が散る演出はさすがにやりすぎな気がしますよ。
衝撃が強過ぎて上記の4人しか観られなかったので、東京では、棘のメンバーも1人ずつ確認したいところです。
「Yonder」は、コーラスの人数が少ないのに驚くべき声量とハーモニーに圧倒されました。天羽珠紀のソロも、今まで知らなかった高音と素直な響きに、改めて感嘆しました。

なんにせよ、両作品共、東京で再び観られるのを楽しみにしています。