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特出を皮切りに、退団や組替えなど色々な情報が続いていましたが、劇団に対する複雑な思いが攻撃的な文面になってしまう懸念から、舞台上の事以外は書かないようにしよう、せめて宙組の発表まで出揃ってからにしよう、と敢えて話題にせず今日まできたのですが。

2009/01/31
雪組 退団者のお知らせ
下記の生徒の退団発表がありましたのでお知らせいたします。
(雪組)
ゆり香紫保
白羽ゆり —すでに発表済み—
谷みずせ
穂月はるな
2009年5月31日(雪組東京宝塚劇場公演千秋楽)付で退団

・゚・(つД`)・゚・

朝日新聞社のカラマーゾフ評
http://www.asahi.com/showbiz/stage/spotlight/TKY200901230283.html
で「間延びしたようなセリフ回しが怖さも感じさせてインパクトがある。」と批評されてました。あれで谷みずせをチェックした人もいただろうに!
新しい者が入り、古い者は去って行く形で90年続いて来た歴史と分かっていても、辛いものですね。
しかも私にとっては、初めての「好きな役者の退団」です。嘘だと言って、辞めるの止めて、と言う気持ちが自分のものとして理解できました。本当にそう言う事しか言えなくなるものなんですね。

演目に食指が動かないため、次回の雪組公演を見る予定はなかったのですが、ちょっと考えないといけません。
だって、これを逃したら谷みずせのにんまりした笑いは見る事ができないんだ。ちょうど昨日、雪組プログラムを見返したばかりで、あの子は私の脳裏で笑ってるのになぁ。

宝塚雪組赤坂ACTシアター特別公演「カラマーゾフの兄弟」11:00回。

新年初観劇で、暗い演目を選んでしまいましたが、宇治十帖(月組公演・夢の浮橋)との二択だったので、どちらにせよ一緒かな。
昨年10月の「銀ちゃんの恋」以来の宝塚観劇です。銀ちゃんとはまた違った意味で、宝塚らしからぬタイトルにも思いますが、実際はロシア文学系は宝塚では比較的ポピュラーな演目ですよね。
原作は未読ですが、名作と言われる文学にはやはりそれだけの力があるんだなと思い知らされました。頑張って読んでみようかな。個人的には新訳より江川卓訳が良いのですが、あるかしら?

まず全体の感想。
1幕は65分しか経ってなかった事にビックリするくらい濃い密度でした。その分2幕は裁判とその後だけに焦点を当てていて、良い比率だったと思います。1幕最後に大事件があって、それでどうなるの?と引きつけた状態で2幕に進むのも正解ですよね。
実は、1幕ではドミートリーの行動の駄目加減を中心にムムと唸っていたのですが、2幕の展開で目頭が熱くなりました。原作者が意図している部分は違うかもしれないけれど、結局血は水より濃く、兄弟愛は尊いなぁと感じました。
人間関係が複雑で分かりにくい&ロシア名前が難しい等の問題はありましたが、枝葉を全部そぎ落としてまとめてるんだろうなと思います。敢えて言うなら「イワンの幻覚」だけ、何の説明もなく登場していたので、どういう存在か分かりにくかったですね。最後のイワン自己崩壊に繋がるキーなので、もう少し補足が欲しかったかな。
イワンについては、帰宅してからパンフの役解説「イワン:カラマーゾフ家の次男。クールな現実家であり理想家」と言う素晴らしい矛盾に気付いて大笑いしました。でもその通りでした。
ちなみに、フィナーレはロシア民謡のユーロビートアレンジに驚かされました。娘役の衣装がヒラヒラじゃない&リフトなしと言うことで、私の好みからすると外角。フィナーレはない方が、余韻は良かったかもしれません。
でもそう言った些細な事を抜かすと、大満足です。無理矢理予定に組み込んで大正解でした。

以下、気になった役について。
今日はイワン@彩吹真央の歌声が最高に素敵でした。「マリポーサの花」観劇時には、声が疲れていて心配だったのですが、全快ですね。相変わらず細いですが……。
細いと言えば、今回はじめてちゃんと意識して見たアレクセイ@沙央くらまも、凄い体の薄さと足の細さでした。
スメルジャコフ@彩那音は、お芝居が良くなりましたね。エルマーの時は、正直物足りない!と思ってたんですけど、妖しい雰囲気が良く出てました。白いヒーロー役より、悪役の方が似合うのかも。強いて言うならイワンに否定されて自己崩壊する時はもっと派手で良いかと。なんにせよ番手に相応しい役者に育ってきてる模様で、元々雪組&月組担当だったファンとしては嬉しいところ。
カテリーナ@大月さゆは、気位の高い貴族娘と言う雰囲気は出てたと思うのですが、敢えて言うなら美貌と言う説得力がもうひとつ欲しかったかなぁ。

最後に、谷みずせチェック!
いきなり告白ですが、雪組再演エリザベートの重臣で見知って以来、谷みずせに注目中です。今まで若手に注目した事がないので、まだ謎が多いですが、あの独特の喋り方、なんとなくツボ。ダンスはちょっと不得意気味かな? 歌はソロで聞いた事がないので未知数です。
前回マリポーサは数少ない役の一つを獲得していて歓喜したのに、肝心の台詞が一つくらいしかなくて結局絶望だったと言う落ちが付きましたが、今回はじっくりピンで見られるくらい台詞があって大満足。
しかし原作を読んでいないので、グルーシェニカの後見人役と思わず、判明した瞬間は仰け反りました。また実年齢に合わない老け役ですよ。このまま老け専になってしまうの?
もう一役の裁判官では、恐らくサムソーノフと区別する為でしょうが、あまり個性を出さず、淡々とした進行でした。が、最後に演じたモブ(流刑者)の一人が面白かったですね。見付けられないかもと思いながら取り敢えずオペラグラスで中心から見て行ったら、ミーチャの後ろで、一人佇んでいる流刑者、これが谷だったと思います。他の流刑者には家族らしき面会人がいるのに、一人で詰まらなそうにしてるなんて寂しい奴なんだろう、どういう経緯でシベリアに行くのだろう、と想像と言うより妄想の翼が広がりました。

そうそう、私が好きな「自分の心の中に良心と言う神様がいる」と言う思想は、なにが原典か分かっていなかったのですが、今日のアレクセイの「良心こそ心の中にある神の姿です」と言う台詞で、ドストエフスキーが原典なのかもと気付きました。

もう少し普通の題名だったのですが、内容を書き終わった後に、こういうタイトルにしたくなって、30秒で変更を決断。
タイトル通り、宝塚雪組公演「マリポーサの花」の役に関するゆるーいお話です。

今回のパンフレットでは音月圭と凰稀かなめまでピン映り写真が掲載されていますが、二人とも「悪い子の顔」で映ってますよね!
リナレスはもう少し可愛い顔を作っても良かったと思いますが、ロジャーはまぁ、本性と言う意味で良いのかな。
2日経って落ち着いてから思い返すと、マリポーサは前回公演作を意識して作られているのかなと思いました。パンフレットの演出家のコメントでも言及していますし、今回の配役は、前回の役と「逆」にしてるようなイメージ。
前回公演は観ていないので細部は分かっていませんが、例えば彩吹は恋敵役から仲間へ、凰稀はへたれから賢い役へ。
……ロジャーって、頭の良いキャラ、ですよね?
記者と名乗って出て来た時は「口の軽い三流記者っぽいなぁ」と思っていましたが、正体はアレなので、実は凄い演技派の男だと言うことになるはず。
それに結局のところ、悪い人ではないのですよね。リナレス救出の時に掛けた電話が「ネロがそちらに行く。詳しいことは着いたら話す」で終わったので、これは現場に着いた時点で約束を違えて一悶着あるんだろうと勝手に先読みしたところ、暗転中に無事救出が終わっていて逆にビックリしたくらいでした。
最後の出番が、チャモロに逃げられたと知って叫びながら下手に走り去るシーンなので、むしろ間抜け感が否めません。
あれ、やっぱりヘタレキャラなのかしら……。

宝塚雪組「ソロモンの指輪/マリポーサの花」11:00回。
初の二階SS席でした。個人的には、一階S席前方に当たった方が満足度は高いですけれど、一階S席後方よりは断然見やすいと言う、複雑な席種でした。結局は、チケットを引き当てる運次第と言う事なのでしょうか。

今日の感想はどちらも三言でまとまります。
ショーの感想「短い。濃厚味。荻田先生の俺世界炸裂」
お芝居の感想「長い。重苦しい。正塚先生の趣味全開」
でした。
演出家買いした公演としては十分楽しめましたけれど、純粋な雪組ファンからの評価はどうなんでしょう?
(組ファンではないような口振りですが、生徒の名前と顔を一番知ってるのは雪組だったりします)

取り敢えず、ショー「ソロモンの指輪」はまったく息を抜く場面がなくて、すごく大変なことになってました。見てる私の側が、情報量を受け止めきれないと言う意味です。
圧巻は海のシーン。
荻田先生演出を生で観るのはこれが初めてと言うこともあって、今はまだ何も内容を語れる段階ではありません。

以下、ミュージカル「マリポーサの花」の感想。
黒塗りの男たちが椅子を持って来て踊るシーンは、正塚先生芝居と初めて出会った「追憶のバルセロナ」を思い出してワクワクしました。小池先生は万人向けの演出をしてくれる、と信頼してますが、自分好みの演出と言う意味では正塚先生一押しなのです。
オープニングは唯のイメージかと思いきや、ラストと繋がっている構成なんですね。
重苦しい中でもちょっと振り掛ける笑いのエッセンス、ラストの盛り上げなどはとても良かったです。後半、リナレス(音月圭)に少し狂気的な表現があったのは、ルキーニを経験している為かなり自然で、ゾっとしました。泣かせは第19場、エスコバル(彩吹真央)との別れのシーン。役者には「良い人」のイメージが強いので、ネロ以外に無関心な元特殊部隊軍人と言う乾いた印象の役自体も、新鮮でした。
しかし残念ながら、この芝居は主要出演者のファンでない限り、リピートするのは辛いだろうな、とも思いました……。
二人で延々会話するシーンが多過ぎませんか。舞台の空きスペースが勿体ない。もう少し短縮してコンパクトに纏めた方が、テンポがあがって良かったのでは。長いせいで、眠気を誘います。お尻も痛みます。
でも決められたトータルの上映時間があるので、仕方ないんでしょうね。
100分芝居に書き直してくれるか、もっと小さい劇場で演じてくれるなら佳作と呼びたい内容なのに。残念です。

それにしても、今日はちょっと出演者の体調が心配な雰囲気でした。
水のダンスのキレ味に「あれ?」。複数人の噛み具合に「あれ?」。極め付けは彩吹の声に「あれれ!?」。もっと明瞭発声な人ですよね。歌声ももっと通る人ですよね。土日は2回公演なのに、心配です。
代わりに良い意味で「あれっ」と思うくらい良かったのが、驚いたことに白羽ゆりでした。
以前の観劇でイメージしていた彼女は、正直少し鈍っぼいと言うものだったのですが、軽やかに踊るし、ドレス捌きは巧いし、何より視覚的に美しい。男役に寄り添う姿が非常に可憐で、男性ファンウケが良いらしいと言うのも、成程と頷く堂々の娘役トップ振りでした。
あとは芝居にもう少し緩急と言うか、味わいが出ると素敵だと思うんですけれど、これは好みの差でしょう。

今日のエリザ語りは、公演が終わってしまう前に、予告通りルキーニの事を。

音月桂演じるルキーニは、これ以上ないほど狂人。
映像で観た瀬奈ルキーニと霧矢ルキーニは狂言回しとしての演技を重視し、飄々としているように感じたのに対し、一幕から通して狂気を纏っていました。

登場時点からして、目が爛々として、落ち着き無くふらふらして、だらしない笑い方で、どうみても危ない男だったルキーニですが、狂気を実感してゾッとしたのは、不思議な事にミルクのシーンでした。
このシーンでは、ルキーニがミルク売りに扮してウィーンの街角に現れます。殺到する人々の前で、けれど樽は空っぽ。赤子や病人がいることを口々に訴える人々に対して、あのセリフ。
「ないモノはないんだ」
追い払うようにでも、あざ笑うようにでも、その役者が解釈したルキーニの気持ちで言って構わないだろう、さほど重要と思えないセリフです。
それを、音月ルキーニは吐き捨てるように叫んだ。
その言い方に突然、このルキーニは自分の機嫌で人を殺せる、人間としての螺子がどこか外れている男だと感じました。これは私のただの直感です。これだけ小さな台詞だと、回によって、セリフのニュアンスは違うかもしれません。
でもあの回の舞台、ミルクを買いにきた女が、あともう一言ルキーニへ言い募ったら、ルキーニはどうしただろう。
そう思うと、酷く恐ろしい物を感じるのです。