青山劇場「舞台『銀河英雄伝説』第一章 銀河帝国編」14:00回観劇。
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こどもの城は幼年期に良く行きましたが、青山劇場は初めて。
舞台装置が充実していると評判の劇場だけあって、セリが大変ダイナミックに空間を演出していました。
また、席は一階後方でしたが、8列目辺りから強い傾斜があるようで見やすかったです。
脚本は、1巻から2巻までを帝国側のみに焦点を当てて追った内容。
政治思想絡みは一切なし。ラインハルトと言う若者の立身出生、栄光と挫折のお話としてまとめていました。
原作ファンとしては、W主人公の一方がまったく出て来ないのは少し収まりが悪い気もしましたが、尺の都合や舞台版のテーマ的には有りかなと納得しました。あんなに名前が連呼されるのだから、原作未読の方にイメージを持たせる為、ベレー帽とサングラスのシルエット姿くらい登場させても良いのでは、と思いましたけれどね。
個人的には、同行のこたつきさんが「LIVE A LIVE中世編みたい」と仰っていたのが印象的でした。確かに、これからラインハルトが暴君になりそうな不穏な空気が最終シーンにはありました(笑)。
その他一部の改変はありますが、「銀河英雄伝説」の舞台化として全体的には納得できる内容でした。
かなり沢山のコロス(アンサンブル役者)が使われていて、躍動感があったのは面白い演出でした。
艦隊をコロスで表現しているのも成程と思ったけれど、気付けたのは1階後方の御陰かも知れないので、これは賛否あるかと。説明台詞をコロスに唱和させるのは、聞き取り難い時もありました。
舞踏会シーンでの場面転換など観ていると、手法的には、ミュージカルでも良かったのではと思いました。一幕では、暗転後場面転換のため次のシーンまで少し待たされる間が気になったので、特にそう感じた気がします。
音響は、二幕でかなり長いマイクトラブルがあったのと、セリフがBGMに殺されることがあり、少々雑な印象。音楽自体は悪くないのですが、繋ぎが悪くてブツ切れだったり、演出と合ってなくただ流れてるだけで少し残念。
照明は、効果的に闇と光が使われていました。
衣装は事前の写真で覚悟していた通り、ほぼ着た切り雀。帝国軍軍服の色は観ていると気になりませんでしたが、体型補正が出来ていないのは難。長身のビッテンフェルトが一番綺麗に着こなしていたように思います。
ちなみに、パンフレットは2000円。帝劇並みの価格で、中身は殆ど役者の写真集みたいな内容でしたが、まぁ装丁から考えれば許容範囲でしょうか。
しかし誤字を見付けてしまいましたよ。それはコロスとして出演している元宝塚の望月理世の経歴。「第二期スカイフェアソーズ」ってなんですか(笑)。スカイステージに加入してない麻生でも「フェアリーズ」だろ、と突っ込んじゃいますよ。
以下、キャスト・役ごと感想です。
宝塚を見慣れているせいかも知れませんが、皆、公式サイトやパンフレットくらい濃いメイクをした方が良かったのでは。オペラグラスで覗くと明らかに日本人だな〜と感じるので、少々気恥ずかしかったです。
ラインハルト@松坂桃李は、初舞台のTV出身若手役者と思えば大健闘。殆ど出ずっ張りで膨大な長ゼリフを言わされ、更には回想として軍服のまま少年ラインハルトを演じさせられていれば、急成長するのも当然? 堂々としているので、下手に見えないと言うのは大きいですね。
熱さと脆さがあり、センシティブ。普通の若者の部分が強調され、原作より共感しやすくされています。その分、カリスマは薄いのですが、最終シーンでは王者の雰囲気が見えたので、この舞台の解釈ではそれで良いのだろうと思います。
ヴェスターラントの民衆に飲み込まれるイメージは、原作からは全く思い付かなかった展開ですが、演出家はこのシーンを思い付いた時に「勝った!」と思ったのではないでしょうか。
キルヒアイス@崎本大海は、やはり背が小さいのが難点。ラインハルトの弟分に見えてしまいました。
誠実そうな感じは受けるのですが、それが地味だとか少し頼りないとも言え、少々評価し難い感じです。
双璧(ミッタ@中河内雅貴、ロイ@東山義久)は、正直言って、出番の割に印象に残りませんでした。白兵戦はさすがに熱かったけれど、終わりが呆気ない割に長過ぎたかな。次の舞台はこの二人を主役にした外伝だそうですが、この舞台だけの評価では食指が動きません。
特に、ロイエンタールは期待していたので点が辛くなってます。首が短いのか、軍服の着こなしが綺麗に観えないのと、背が意外に低く格好よく観えなかったのが残念。女性が自然と寄って来ると言う説得力がビジュアルにありませんでした。
メルカッツ@ジェームス小野田も、ビジュアルは大事だと思った一人です。演技的な問題はないのですが、提督はロマンスグレーでダンディなお髭の叔父さまと言うイメージだったので、申し訳ないけれど体格と髪型が駄目でした。
アンネローゼ@白羽ゆりは、しっとりした演技。配役の時点で想像した通りの出来で、特に穴はなく役を演じていました。欲を言えば、もう少し減量して欲しかったです。
ヒルダ@宇野実彩子は、もう少しボーイッシュで女らしくない方が好みです。ラインハルトに味方する理由が5つ(ラインハルトだからこそ味方すると言う、まるで恋してるような理由が追加)に増やされているのが、女性らしさを感じたのかな。
あと、失礼ですが、胸が大きいことに眼が奪われました。また、原作にない初登場場面で、門閥貴族からセクハラされるのは不快でした。
ニッカボッカズボンみたいなのは可愛かったですね。
ベテラン勢は、流石に安定していました。
その中でも役の解釈まで含めて凄いと思ったのは二人。
一人は、ラインハルトの父セバスティアン@堀川りょうです。父親について、私はラインハルトに人生で最初に与えられた「敵」だと解釈していたのですが、この舞台では「同情すべき弱者」や「ラインハルトの鏡」として使われていて、成程と視界が広がりました。
もう一人は、フリードリヒ4世@長谷川初範。滅びを望む相手としてラインハルトを選んだという解釈は、原作でも仄めかされているけれど、あそこまで表現したのは個人的に天晴れと思いました。
オーベルシュタイン@貴水博之も非常に良かったです。
No.2不要論が余り語られないので、オーベルシュタインが個人的にラインハルトを操る為にキルヒアイスを排斥したがっている展開に観えなくもないのは、可か不可か悩ましいですが、キャラは非常に的確に表現できていたと思います。
メイン以外では、ビッテンフェルト@吉田友一がかなりコミカル方向にデフォルメされていたけれど、逆に原作未読でも個別認識できる役になっていて美味しかったのでは。
同様に理屈倒れのシュターデン@ひわだこういちも、「こんな戦法、教科書には載っていないぞ!」のデフォルメの御陰で印象に残りました。
シュナイダー少佐@村上幸平は、アスターテ会戦の時にずっとパネル操作してるような手の動きが気になりました。あの演技は、必要だったのか疑問です。「エネルギーカプセルを抜き取っておきました」のシーンで笑いが生じたのは吃驚しました。
オフレッサー上級大将@中村憲刀は、確かに原始時代の勇者と言う感じで迫力がありました。それだけに、双璧の会話を原作通り残して欲しかった気がします。双璧の見せ場として活用する為、最期は壮絶な自死を遂げる形に変更されたのですが、それが却ってオフレッサーを格好良く見せていたように思います。
賛否両論ありそうですが、私はこれもアリかな、と思える方だったので、第二章が公演される時は前向きに検討したいと思います。