宝塚宙組「モンテ・クリスト伯/Amour de 99!!」11:00回を観劇。
ミュージカルプレイ「モンテ・クリスト伯」は、原作を大胆にアレンジして1時間半に超短縮した作品。
復讐に至る事件を描くのに半分くらい使って、緻密に積み上げて行く準備はカット、3分クッキングくらいの要領で順番に復讐していきます(笑)。
展開は早いしキャラクターが序盤から大勢登場するため人物相関図が難しいですが、作中解説が過剰にあるので、原作を読んでいなくても話が理解できたようです。私は、演劇部による解説はもう少し控えるかカットして、重厚な作品にした方が好きです。でも、大衆に分かりやすくウケるという意味では、この脚本も正解だったのでしょう。
楽曲は、「罠にはめてやる」という3悪人の歌が耳に残りました。ハモりと、分かり易いキャッチーさが好きです。
個人的に久し振りとなるレビュー「Amour de 99!!」は、宝塚の過去の名作ショーから場面をツギハギ再演する形式。
ただ、セレクトが昭和前半に偏っていて、如何せん古さを感じました。芝居は、その時代自体を演じるから古い作品でも脚本が良ければ再演して欲しいけれど、ショー作品は意外と難しいんですね。
個人的には、今作用に新規に作られたプロローグが一番現代の感性にあっていて、気分を盛り上げてくれると感じました。折角の藤井大介先生演出なら、新作ショーを観たかったかも。
それでも、シンプルな舞台で力強く舞うのが印象的な「ザ・ストーム」の「祈り」と、比較的今風のお洒落感がある「メモアールドパリ」の「パッシィの館」は好きでした。
以下は、印象に残った主なキャストだけ抜粋。
エドモン@凰稀かなめは、やはり冒頭の幸せな青年時代が一番格好よくて魅力的。優しい声質なので、復讐の鬼という情念や年齢はあまり感じませんでした。
メルセデス@実咲凛音は、歌唱力を感じました。母親の愛が良く出ていたので、決闘前夜のシーンはエドモンを刺す方が自然な気がしました。
脚本上、美味しいのはベルツッチオ@緒月遠麻。宝塚の場合、観る側が現実の人間関係を勝手に上書きする割合が多く、余計に役の美味しさが引き立っていたと思います。ただ、出番が多過ぎて逆に気になるポイントもありました。
フェルナン@朝夏まなとは、原作から大幅にキャラクターを改変され悪人度が高まっていましたが、悪い役の方が結構好きかも知れません。貴公子然とした印象も良かったです。
卓越した演技力に驚愕させられたのは、幼少アルベール@花咲あいり。大人が演じる子役のワザとらしさがなく、台詞も明瞭。94期生なので、今までも姿は観ている筈ですが、今回初めて認識しました。
前回公演(銀英伝)期間は「演目が銀河英雄伝説である」ということで、ある意味「祭」だったようです。
今回、普通の2本立てで宙組を観ると、この1年の退団や異動により、組子の顔触れが入れ替わっていることを改めて実感しました。
凰稀かなめを頂点とする新しいピラミッド自体は受け入れているのですが、観ていて心が浮き立たないのです。風莉じんがいれば、ファリア神父が似合っただろうと思ってしまったり、群舞シーンで凰樹いちが何処にもいないと気付いて、愕然としました。
宙組が一番愛着ある組であることは変わりません。が、愛ゆえの寂寥感、喪失感が、今、静かに襲って来ています。