宝塚宙組「Shakespeare/HOT EYES!!」11時回(e+貸切)を観劇。
最後の挨拶時に「イープラス……さま!」と慌てて言い足した感があって、一瞬ヒヤリとしたのですが、会場の空気は温かく笑っていたので安心しました。
なんと2年ぶりの宙組です。それでも組子のことはある程度覚えているもので、楽しめました。
なお、久し振りに宙組を観た理由は、2016年中に宝塚を初観劇する場合どの公演が良いか、と相談され、この公演を推薦したため。公演の善し悪しは幕が上がらないと分からないため、相手の観たい物やチケットの取りやすさ等を加味して選んだのですが、推薦者として自分でも確認しておこうと思ったのでした。
そんな次第で、今回は「初めて観る人」の視点を意識しながら観劇した気がします。
ミュージカル「Shakespeare ー空に満つるは、尽きせぬ言の葉ー」
シェイクスピア没後400年メモリアルに、シェイクスピアの若い頃を描くオリジナル新作という意欲作。
1時間半しかなかったとは思えないくらい、紆余曲折あって長い話なのですが、ロマンス、家族愛、劇場愛、政治劇と盛りだくさんなのに破綻せず、涙も笑いもある良い作品でした。終盤になって突然コメディ色が強くなるけれど、前半と繋がっているからこその笑いがあるんですよね。「お前はいつも俺を奮い立たせる」の台詞が、あんな笑える形でリプライスされるとは思わなかったわ。
哀しい死はあるし、「時」が告げるように未来は色々だけれど、少なくとも切り取った物語としては幸せな終わりを迎えるので、観劇後が爽やか。
コスチューム物ということもあって、宝塚歌劇らしさを大いに味わえる作品だったと思います。
また、トップコンビと二番手以下、一定のクオリティがあって安心して観劇できたのも良かったです。実咲凛音は以前から歌唱力のある娘役と言われていましたが、朝夏まなとと真風涼帆は、「こんなに歌えたっけ?」とビックリしました。
ダイナミック・ショー「HOT EYES!!」
全編大階段を使ったショー、と前宣伝していましたが、正直、大階段の存在感はありません。階段の途中にステージを作っているのが新鮮だったくらい。また、畳み掛けるような歌い継ぎが多いため、個人的にはショーというより、ややコンサート風味に感じました。
ダークアイズ(ジゴロ)の場面は、少女に導かれて始まる男役同士の絡み(+美穂圭子様の歌)というパターンが「NICE GUY!!」と同じで、最近の藤井先生の引き出しの少なさにちょっと苦笑。ただ、妖魔×軍人のファンタジーだった「NICE GUY!!」に対し、今回はスーツ物なので、個人的には居たたまれない感じがしました。
ミステリアスアイズ(ジャガー)の場面も、今ひとつテーマ性が見えず、残念でした。
それ以外は、私の好みとは外れるけれど、平均点のショーだったと思います。
特に主題歌がキャッチーで、「キラッ☆」という擬音を付けたくなる振り付けなど、若さ溢れて弾ける感じがあって、観劇後は楽しい気持ちになれました。
以下、キャスト感想です。
ウィリアム・シェイクスピア@朝夏まなとは、早くも安定感のあるトップスターという印象。妻のアン@実咲凛音は、知性のある役がピッタリだったと思います。2人とも、回想では恋愛、現代の時間軸では夫婦愛を醸していたと思います。
ジョージ・ケアリー@真風涼帆は、見た目も声も大変男らしいですね。実はヘタレなところも含めて、非常に良かったです。妻のベス@伶美うららとは大型美男美女カップルという感じで、眼福。歌わない伶美は、正しい使いかただと思います。
エリザベス1世@美穂圭子はさすがの貫禄! 反射的に跪きたくなる威厳がありました。
ただ、巧いので文句はないけれど、ショーでも相当歌うため、組子ファンは悔しいのでは……と心配になりました。
リチャード@沙央くらまは、男気を見せる儲け役でした。宙組の長身勢と一緒でも小柄さが気にならない、大きい演技だったと思います。ショーは意外と少年っぽさ全開で、驚くほど可愛かったです。
サウサンプトン伯@愛月ひかるとエセックス伯@桜木みなとは、2人で一組の扱い。格好良いところやエロスや笑いやらと持って行くので、美味しい役だったと思います。特に桜木みなとの美男子っぷりには驚きました。以前は頬がふっくらして子供っぽいイメージだったのに、いつの間にか大人になっていたんですね。
ロバート・セシル@天玲美音は、いつもの眼光の鋭さに加えて立ち姿も工夫されていて、底知れない怖さがありました。
俳優の1人ウィル・ケンプ@蒼羽りくは、非常に楽しそうな演技や踊りにニコニコさせられました。今回は芝居のビジュアルも良かったですが、ショーでのウィンクや投げキッスの連発にはヤラレました。ダンスにおける、指先まで行き届いた動きのしなやかさも好きです。あのナルシストっぽさも含めて、更に進化して欲しいと期待してます。
ヘンリー@純矢ちとせは、久し振りの男役(による女役)で、舞台上ではいつも通りの娘役演技でしたが、舞台を下りると大股で腕も開き気味という男っぽさの表し方が面白かったです。
ベン@星吹彩翔は、少々役が小さ過ぎたかな。印象に残るシーンがなく、勿体ないと思いました。
ハムネット@遥羽ららが、さほど小柄でない筈なのにしっかり小さな少年に見えて、技術だなと感心しました。