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宝塚宙組「エリザベート ー愛と死の輪舞ー」11:00回を観劇。
本日の役替わりは、Bパターン(ルドルフ役蒼羽りく、エルマー役桜木みなと、シュテファン役澄輝さやと)。

役替わり公演ですが、チケットが取れたのはこの回のみ。
個人的には、Aパターンでエルマーの蒼羽りくも観たかったし、ルドルフはCパターンの桜木みなとが似合いそうだと思います。しかし1回しか観られないなら、やはり「りくルド」を選ぶほかないだろう、ということでBパターン初日の観劇になりました。

ルドルフの前に、エリザベート@実咲凛音の演技に対する私の解釈を述べさせてください。
今回の舞台では、エリザベートの“強さ”よりも“弱さ”を感じました。
「嵐も怖くない」でのフランツとの遠い距離感、ハンガリー訪問での強張った顔、戴冠式でもほとんど笑顔がない様子からは、内弁慶で、人と触れ合うのが苦手な少女シシィというキャラクターが見えました。それゆえ、従来のエリザベートが自分の意志を押し通そうとしていたのに対し、彼女は単に自分の硝子のような心を守ろうと自衛しているように感じました。

そしてルドルフ@蒼羽りくは、正にそんな少女シシィの「鏡」でした。
顔は父親に似ているけれど、中身は母親と同じ硝子の心で、非常に脆い皇太子だと感じました。その上、母親と違って取り繕うのも下手で、ずっと不安そうな眼をしているのです。父親から独立運動を否定されたときも、怒りはなく、ただひたすらに怯え悲しんでいるように見えました。
今までの印象から、もっと熱量のある演技で来ると思っていただけに、このアプローチはかなり意外でしたが、エリザベートが強い女でない今回の舞台においては、非常に良い合わせかただったと私は思います。

前述の通り、エリザベートの演技が従来と違うと感じたため、ほぼ彼女に注目して観ていました。そんな偏った視点でも、最終的にはトート@朝夏まなとの存在感を強く感じました。今回の舞台を掌握していたのは、ルキーニやエリザベートではなく、トート閣下だったと思います。
また、トートは銀髪の巻き毛というお約束を完全に破壊した点も、面白いアプローチだったと思います。本人に似合うというだけでなく、これまでより闇と死の気配を感じるビジュアルでした。

従来との違いを感じたのは、それだけではありません。
「エリザベート」は、何度も再演されている演目なので、テンポや台詞の抑揚、動作といった演技に「」というべきものがありますが、今回の舞台は、型っぽさが薄れ、全体的に自然な演技だと感じました。
特にそう感じたのは、「生きていけない」「死ねばいい」のやりとりです。大袈裟な台詞回しが抑えられており、素直に台詞を受け取れました。
それに関係があるのか、全体的に公演のテンポが遅めでした(終演が5分遅れ)。
東京公演は、大劇場公演より音楽が早回しだとよく聞きますし、私もそう感じていましたが、今日はゆっくりした演奏でした。最初は聞き慣れたテンポと違う違和感がありましたが、もしかすると、そのお陰で演技の密度も濃かったのかもしれません。

そんなわけで、興味深い「エリザベート」ではあったのですが……
エリザベートが強くないため、ゾフィー他も必要以上に強く振る舞う必要がなくなり、結果、自然ではあるけれど熱量の低い舞台だった気がしました。コーラスも、宙組にしては弱かったです。
私は、舞台作品にはもっと強い熱量で、客席を飲み込んで欲しいのです。
それゆえ、まとまりがあって、よく出来ている舞台だったのに、物足りなさが残りました。

続きは、その他のキャスト感想です。

フランツ@真風涼帆は、予想をグッと超えた素敵な陛下でした。辛抱役でも、二番手の役として輝いて見えました。
ルキーニ@愛月ひかるは、演技と歌は懸念していたよりずっと良かったけれど、やはり狂言回しなので、滑舌の悪さが一番気になりました。

エルマー@桜木みなとシュテファン@澄輝さやとは、ハンガリー時代は革命というほど組織立った活動はしていなそうに感じる、ノーブルな反体制派。ツェップス@凛城きらが司令塔に見えました。
エルマーは、二幕のヒゲ姿が非常に好みの叔父さま顔で震えました。美形はヒゲがあっても美形でズルイ。

少年ルドルフ@星風まどかは凄く可愛い少年で、歌もうまいし、延長線上に青年ルドルフが垣間見える脆さも感じられて、素晴らしい演技でした。青年になると歌が下手になるのが申し訳ないくらい(笑)。
可愛いといえば、ヘレネ@桜音れいも非常に可憐で、「変なヘアー」を物ともしない美少女でした。

黒天使たちは、集団で一個体なのかもしれない、と感じる揃い具合。
マダムヴォルフ@伶美うららは、このキーなら十分歌えるし声も出るのですね。

配役の時点で騒然となったヴィンディッシュ嬢@星吹彩翔は、顔芸もありつつ、面白いヴィンディッシュ嬢でした。最後、彼女の関心は美しい扇に移っていて、完全にエリザベートの存在を忘れているのです。今回のヴィンディッシュ嬢から狂気は感じなかったけれど、エリザベートが「あなたの方が自由」と羨む幸福さは初めて感じました。
役の出番は一カ所だけですが、マクシミリアン侯爵家の親戚や、カフェの男など、掛け持ちも多くて、ところどころで登場する星吹を見付ける遊びも楽しめました。

ウィーンのカフェで、三番目に歌い出す男役が巧いと思ったのですが、あの子が噂の瑠風輝かな?

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