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宝塚月組「グランドホテル」「カルーセル輪舞曲」15:30回(e+貸切)。

ザ・ミュージカル「グランドホテル」

群像劇の代表作ということだけ知っていて、とても楽しみにしていた「グランドホテル」。
トム・サザーランド版も観たかったけれど、時期的に都合が付かず、今回の宝塚版(男爵ver.)が初観劇です。
観劇直前、少々体調が優れず不安だったのですが、開幕からグランドホテルの世界に引き込まれ、確かに、人生が交差し、夫々に悲しみと喜びが残る群像劇を最後まで集中して観ました。

演出が精密で、それほど大きな装置もないのに豪奢なホテルの光景が目に浮かびます。演者も、作品のレベルに応える上質な演技だったと思います。
終盤、急に観念的なシーン「Roses At The Station」と「Death/Bolero」が連続で挿入されるのは、少々分かりにくい気がしましたが、色々と演出意図があってのことなのだろうなぁ。1回では少し観たりない感じです。

レヴューロマン「カルーセル輪舞曲」

一方、「モンパリ90周年記念」と言いつつ、ショーはやや平凡。これまで、稲葉先生のショーは当たりだと思っていたので残念。藤井先生同様、登板し過ぎでしょうか。中詰めのブラジルが長くて退屈しました。
ただし、大階段が出てきてからは絵面も美しく、黒燕尾に白ドレスという鉄壁の組み合わせは特に美麗でした。

以下、キャスト別感想です。
群像劇と言いつつ、実は主要な登場人物はそれほど多くありません。

新トップスター・珠城りょうの男爵は、悪党だけれど、チャーミングで憎めない紳士で、根の善良さが滲み出ている珠城に合った役でした。しかし、いつ観ても健全な人と感じていたのに、寝台を跨いでグルーシンスカヤを誘うシーンではぐっと大人の男の色気が出て、ドキリとさせられました。
逞しく安定感があり、歳若くとも男、という雰囲気が滲み出ています。この路線で、結構面白い男役トップスターになるかも知れない、と思い始めています。

年上の恋人となるグルーシンスカヤ@愛希れいかは、枯れたバレリーナ感がありました。貫禄たっぷり。娘役、宝塚という枠組みを超えた、女優の誕生を目の当たりにしたのかも知れません。
男爵が死ぬ、という結末を知っていたため、グルーシンスカヤが恋の喜びを歌っても、終始泣けて仕方ありませんでした。

この公演で、美弥るりかが一皮も二皮も剥けた!と思いました。
オットー役を、非常に誠実に丁寧に作っています。
今回のパターンでは脇役ながら、死を前にした男の再生の物語をしっかり魅せてくれました。順番は逆なのですが、「この人物を主役で再編してもいいな」と思わせてくれました。人生を楽しむことを知ったオットーの狂乱に、泣かされます。
そして、千鳥足のチャールストンに、こんな踊れたのかと驚かされ、逆にショーではアラビアンな「シルクロード」のシーンで本領を発揮し、二度も三度も「美弥るりか」を再発見した気分でした。
二番手という立場が、スターを作ったのかも知れませんね。

なお、その「シルクロード」のカゲデュエットは、輝月ゆうま白雪さち花が透明な歌声で聴かせてくれました。劇中は男役を千海華蘭だと思って聴いていたので、プログラムを確認してビックリしました。
実は、ショーになると、輝月ゆうまを全く判別できないみたいなのです。芝居は直ぐ見付けたのに……。

役替わりのうち、フラムシェンは海乃美月。コケティッシュで可愛い少女でした。短いスカートから伸びた脚線美が素晴らしいですね。
脱ぐシーンは、どこまで露出するのかと、異様に緊張させられました。

ラファエラ@朝美絢は、グルーシンスカヤに対する偏執な部分が欲しかったかな。真面目な付き人に見えました。
耽美という免罪符で男同士が絡む演出はよくあるのですが、女性同士の同性愛要素は、スミレコードに引っ掛かるのかな。
逆に、エリック@暁千星はなかなか良かったです。やはり、スター性のある役者だと思います。

プライジング社長は、専科の華形ひかる。「現役のエロ親父」を演じたら、右に出るものがいませんね。
下手で、男爵とオットーが心に刺さる芝居をしているのに、上手で同時進行する社長とフラムシェンの状況が気になって気になって、視線が左右に散って仕方ありませんでした。2回観れたなら、割り切ってどちらかに集中できたのに!
ショーで妙に歌の出番が多くて、不安を覚えたけれど、本人比ではかなり聴ける歌だった……と思います。

意外な歌担当としては、宇月颯もダンスシーンでソロを披露。
ダンサーとしての印象が強いため、朗々と歌い出した人物を確認しようとオペラグラスを覗き、ビックリしました。

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