フィジカルシアター「レニングラード・ホテル」14:00回@渋谷スパイラルホール。
http://www.sayatei.com/lh/
3日間、4公演のみの公演。
再演版「空白に落ちた男」の衝撃から7年。4年前の「シレンシオ」が期待はずれだったことから、少し悩みましたが、やはりチケットを用意して参加しました。
ーー結果、衝撃はなかったけれど、笑いあり緊張感ありの1時間強で、ごく普通に面白かったです。
座席に、プログラム代わりの「招待状」が置いてあるところから早くも雰囲気が漂っていて、軽妙洒脱で、少し毒がある密室劇。台詞は一切なかったですが、これまでの二作に比べると、非常にわかりやすいお話でした。
女装してハウス・キーパーを水増ししてる箇所や、唐突に始まる椅子取りゲームなどは、最高におかしかったです。
雪深い山の頂、湖のほとりに佇むレニングラード・ホテル。
優雅で美しい支配人と寡黙なスタッフによりホテルは営まれていた。外界の混乱はホテルの随所から感じ取れたが、その美しく静謐な空間は支配人によりなんとか保たれていた。
アル中で退役軍人のドアマン、新人をいびることだけが生き甲斐のポーター、戦争未亡人のメイド。
湖に張る氷のように、彼らは固く結束しているかのように見えたのだが、ある日、身なりの良い紳士がホテルを訪れたことから、
次第にレニングラード・ホテルに奇妙な変化が生じはじめたのだったーー
意外とマイムは控えめで、ダンスとも言い切れない「動き」で見せる、正に「フィジカルシアター」だと思います。
装置は小道具とフロント台くらいでしたが、途中、棒とゴムでできているらしいフレームを使い、廊下やエレベーターを表現する箇所は、シンプルながらわかりやすい上に想像力を刺激するので感心しました。
でも実は、開演時間を過ぎても曲が流れるだけでなかなか始まらず、バッグヤードで問題が起きているのでないかと心配したり、楽曲「4分33秒」のように、空っぽの舞台を観て想像を働かせるような類の前衛芸術ではないよね?と不安になったりしました。
今回も、首藤康之氏の動きの美しさ、気品に酔いしれました。
演じる支配人セルゲイは、少し面倒だけれど真面目で優しく可愛い人だと感じました。そしてホテルへの愛着を端々から感じていたために、冒頭では気付かなかったけれど、奪われたホテルの名前が変わっていたことに衝撃を受けました。
カーテンコールで、お辞儀する方向を間違えてしまって、以後ずっと照れていたのが非常に印象に残りました。
ちびのポーター・ニコライ@藤代博之は、コメディ要素が強く、色々な意味でズルかった印象。
年齢層が高い客席に、小さいお嬢さんが二人いて驚きましたが、副支配人イワノフ@黒田高秋氏の娘さんですね。タバコを吹かすシーンで、姉妹が「あんなにタバコ吸ってる!」と思わず囁き合っていたので、家に帰ってから怒られるが良い!と思いました(笑)。
なお、火を使っていたので、電子タバコではなく本物のタバコだったようです。
ウラディミル@丸山和彰は、首藤氏と並ぶと終始「ソビエト」感を放っていました。凍えるようなレニングラードの風を感じたのは、この二人に寄るところが多いです。
他の面々の容貌は、どちらかというと日本人風で、逆にそのチグハグさが面白くもあり、特にハッサン@金田一央紀の嘘っぽさは笑えました。