宝塚宙組「神々の土地」「クラシカル ビジュー」15:30回(e+貸切)を観劇。
トップスター朝夏まなと退団公演……ですが、寿組長は卒業公演と仰有っていました。
ミュージカル・プレイ「神々の土地 〜ロマノフたちの黄昏〜」
演出が「月雲の皇子」「星逢一夜」の上田久美子先生、革命直前のロマノフ王朝物、という時点で悲劇だな!と涙を覚悟して観に行ったのですが、大変美しい舞台でした。
作中の台詞通り、「美しいものを観ることには価値がある」という印象。
同時に、美しい世界を外から眺めて終わった感じもありました。これまでの上田作品は観るものを引き込んで魂を揺さぶったけれど、今回は観客を傍観者の立場に留めていたように思います。
見た目的には、2階席でも十分楽しめる作りで満足しました。
白眉は、酒場の渦巻くダンスシーンだと思います。
イリナと別れた後のエピソードは蛇足のように思ったけれど、最後にロシアの大地に戻った魂たちが行き交う様を見ていたら、ここまであっての作品だなとわかりました。
誰もが最善を選びたいと思って行動していたのに、歴史の大きな流れに逆らえない哀しさと、すべて受け止めて白い雪の下に帰していく大地のイメージが残りました。
ロシア物ということで、難解な作りを警戒していたのですが、非常にわかりやすく作られていました。
前知識がないと、ドミトリーとイリナがどういう関係が飲み込むまで分かりにくいかな、と思いましたが、作中で理解できるようにはなっています。
一番のポイントは、呼び名が統一されている点でしょう。ロシア物は「本名」と「愛称」の法則が複雑なので、話の筋が単純でもわかりにくく感じることがあります。しかし本作では愛称を使わないので、混乱が起きませんでした。
暗殺シーンは、少々物足りなかったけれど、あまり凄惨なものにしても宝塚としては受け入れ難いでしょうし、悩ましいですね。
そもそも、ラスプーチン@愛月ひかるの存在だけでスミレコードは逸脱していたかもしれません。エロでもグロでもなく、しかし醜悪で恐ろしい存在でした。スター生徒である愛月にこの役をあてるのが凄い采配だと思うし、それに応えた演技にも驚きました。
今回、男役二人が女性を演じていましたが、なかなか適材だったと思います。
特に皇后アレクサンドラ@凛城きら。観劇中は、こんな娘役がいたかしらと首を捻っていました。
彼女の「お前たちは私が守る」と言う台詞は、その後の皇帝一家が辿る道を思うと残酷だと思います。
ウラジミール@蒼羽りくは、脇役にしては目立っていたし、軍服が似合って格好良かったです。もう一度観劇の機会があるので、楽しみ。
星吹彩翔が見付けられず、宙組観劇の楽しみなのに気付けないなんて!と観劇後に慌てました。家令のポポーヴィッチだったのですね。これは役不足だった気がします。
レビューロマン「クラシカル ビジュー」
宝石をテーマにしたショーは過去にもありましたが、本作はそのテーマにあまり拘りすぎず組み込んでいたと思います。
凄く出来が良いとは思わなかったけれど、宝塚のレビューとして求められている要素がバランス良く盛り込まれていて、ストレスなく見られるショーでした。
男役群舞は、最もシンプルな黒燕尾で、組の仲間に別れを告げるという最高の形でした。これは千秋楽にファンが見たら泣きますわ(経験済)。
ストーリー仕立てで一番好みだったのは、怪盗のシーンです。最初はヴァンパイア物か?と思ったのですが、予想外の展開でした。