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舞台「プルートゥ PLUTO」13:00回@Bunkamuraシアターコクーン
http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/18_pluto/

鉄腕アトム「地上最大のロボット」を下敷きにした、浦沢直樹先生の漫画「PLUTO」は一読してから観劇しました。
原作では受け手に委ねて曖昧にしている箇所に、舞台は「正解」を与えて飲み込みやすい作品にしていたと思います。それが良いことか否かは観客によって異なると思いますが、私は時間制限もある舞台ならではの改良と受け取りました。
アトムとゲジヒト以外の標的ロボットは登場しません。それに伴って殺害順も入れ替わっていましたが、基本的には原作の展開に忠実で、台詞などほぼそのままでした。

演出・振付はシディ・ラルビ・シェルカウイ氏。
原作のコマなど映像を多用していました。最初は漫画の作りに拘りすぎでないかと感じたけれど、実際に物語が進むと、アート風の舞台装置が変幻自在に移り変わり、どの光景もよく出来ているなと感嘆させられました。
ゲジヒトの家のシーンなどは、全体的に白い絵作りも含めて、キューブリックの映画のようなサスペンス風の味付けが濃く、ゾクッとする感じもありました。
他方、物理的に持ち上げられて空を飛ぶアトムなどのシーンは、ちょっと失笑が漏れそうでした。

以下はキャスト感想です。まず、初演から続投のキャストについて。

アトム@森山未來は、そもそも少年という外見ではなく作品の選択ミスでは?と危惧していたけれど、実際の舞台では驚くほど「アトム」だと受け取れました。どちらかというと、子供っぽく振る舞うのではなく、ロボット=人間ではないものとしての表現をしていたのが良かったのかもしれません。
また、頭頂部倒立など、身体的な能力もフルに拝見できました。もっとも、アトムは出番が多くなく、作品全体のダンス量はちょっと物足りなかった気もします。
なお、ユーロポール部長の声も担当していたのは全く気付けず驚きました。

お茶の水博士@吉見一豊は、一番原作キャラクターに沿った役作りだったように思います。
一方、Dr.ルーズベルト(声)は、ややエキセントリックに振り切り過ぎで、私のイメージではありませんでした。可愛いテディベア姿も相まって「モノクマ@ダンガンロンパ」と感じてしまいました。
真逆の印象だったのが天馬博士@柄本明。天馬博士に関しては、私が抱くイメージとはかなり差がありました。また、台詞の間がなく矢継ぎ早に喋るのも、少し苦手でした。
しかし、ブラウ1589(声)は不思議な哀愁が漂っていて良かったです。漫画版でも、レクター教授@羊たちの沈黙のポジションで美味しいと思っていたのですが、舞台版でより好きになりました。

続いて、今回から参加のキャストについて。
初舞台のウラン/ヘレナ@土屋太鳳が、すごく良かったです。ウランはちょっと五月蝿い女の子だなと思ったけれどその通り「少女」然としていて、逆にヘレナは「妻」という素敵な女性でした。
ゲジヒト@大東俊介は、役に対して若過ぎるかなと思ったけれど、疲れた中年男ではなく、現役で仕事に燃える刑事という感じになっていて、主人公として却って協調しやすかった気がします。声も聞き取りやすくて良かったです。
そして、声が良いといえば一番はアブラー@吹越満でした。淡々と話す中に色気があって素敵な反面、瞬間的に声を荒げるとヒャっと飛び上がりそうなくらいの憎しみがあって恐ろしかったです。

その他男女9人のダンサー(兼役)が参加。
単独で印象に残るのはサハド@池島優ですが、アリ/ロビタ@上月一臣も素晴らしい人形遣いだったと思います。

今回面白かったのは、観終わった後に感じた「熱量」の違いです。普段、ミュージカル以外で3時間(休憩15分)の芝居を観ると、観客の私も結構疲れるのですが、今回はそこまで疲労しませんでした。
それは、主要人物がロボットであり、彼らは高性能ゆえ感情を理解していくけれど、やはり人間そのものより発する熱量が低かったためでないか、という気がします。

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