東急シアターオーヴ「マイ・フェア・レディ」13:00
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Wキャストはイライザ@朝夏まなと、ヒギンズ教授@寺脇康文バージョン。
昔、オードリー・ヘップバーンの映画版を見た際、無駄に長くて冗長という印象を抱いて早送りした記憶があり、舞台版も途中で飽きるのでないかと危惧していましたが、想像よりずっと楽しめました。
ただ、一曲が長いことは間違いなく、個人的には少しずつ短くして上演時間を3時間以内に収めてくれた方が、観やすいと思います。著作権等の都合で、編曲が許されないのでしょうか。
舞台作品として面白いかつまらないか、という二者択一に対しては「面白い」ですが、自分がこの作品を好きか嫌いか、という二者択一であれば「嫌い」という結論に至りました。
1幕は、コメディ且つイライザのサクセスストーリーとしても前向きに観ていられます。しかし2幕になると、舞踏会の夜のやりとりで自尊心を傷付けられたイライザの怒りと悲しみが痛いほど伝わって、あとはヒギンズの言動がひたすら不愉快でした。
そのため、イライザがヒギンズの元に戻る結末に納得できません。
ヒギンズは、単に一人では生きられないのが自分だったことに気付いただけであり、イライザがなぜ家を出て行ったのか、理解できていないままだと思います。そんなヒギンズの元にイライザが帰ってきても、結局いつか破局するのでないでしょうか。
というわけで、お話は納得できませんでしたが、役者はとても良かったです。
本作が女優デビューであるイライザ@朝夏まなとは、笑顔や仕草がキュートで、真っ直ぐでいじらしい可愛い少女ぶり。男前な下町娘っぷりもなかなかでしたが、淑女として磨かれていくほど、どんどん魅力的に変貌していって好感度が高くなりました。フレディ相手に歌う「Show Me」は、女性の魅力がありつつイライザの地も出ていて好きです。ソプラノはファルセットで歌っていましたが、無理に地声で歌うより高音も綺麗で正解だと思います。
ヒギンズ@寺脇康文は、正に男の理論で生きている「言語オタクの独身貴族」という奴で、そういう脚本上の人物像として正確な演技だったと思います。台詞も明瞭で、言語学者として説得力がありました。ただ、あまりに自分勝手なその姿勢は、淑女に成長したイライザに釣り合わないと感じさせ、好演が仇となった印象。
逆にピッカリング大佐@相島一之は、妙に愛嬌のある、とぼけた味わいがあるので憎めない人でした。
ヒギンズの母@前田美波里は、とてもチャーミングな老婦人でした。どうしてこの素晴らしい夫人から、教授のような人が生まれてしまったのか……。
ドゥーリトル@今井清隆は、あの喋りを聞いていると5ポンド渡したくなってきます。無茶苦茶な理屈を言っているけれど、彼なりの「筋」を持っていることは伝わってきます。最終的に「Get Me To The Church On Time」でオチもついていますしね。
フレディ@平方元基は、能天気で底抜けに明るく、報われて欲しくなる子でした。