原宏一著「かつどん協議会」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
失業中の蓑田は、行き着けの大衆食堂のおかみさんに頼まれ、店主代理で全国食堂中央連盟の会議に出席する。そこではカツ丼人気再生を計るべく関連業界と連合キャンペーンを検討していたが、日本農業連合会、養豚協同組合、日本鶏卵連盟、製パン粉連合会、醤油会社、砂糖業界、鰹だし業界、刻み海苔業界といった各業界のメンツと利権が絡み、会議は混沌と進まない。遂に事務局長の怒りが炸裂し、その日、かつ丼の終焉が訪れた。(かつどん協議会)

表題作含む、下記3本の中編小説が収録。

  • かつどん協議会
  • くじびき翁
  • メンツ立てゲーム

「かつどん協議会」は、物語のメインストーリーとはあまり関係のない、カツ丼を食べたくなる食事描写や、カツ丼の主役がなにかという議論、凋落に関する考察というディテールが面白かったです。
そんなわけで、ついつい、あらすじにも本筋と関係ない業界を山ほど盛り込んでしまいました。
屋台崩しなオチはちょっと納得いかなかったけれど、ここまで会議が盛り上がってしまうと、収拾のつけようがないから仕方なかったのかな、とも思います。

逆に「くじびき翁」は、佐野老人が真っ直ぐに自身の主張を貫いたオチで、清々しく感じられました。内容的にも、民主主義とはなんなのか、正しい、良いものを選べる政治形態ではないという指摘は、なかなか考えさせられるテーマです。

「メンツ立てゲーム」は、社会人として勉強になる「謝罪のポイント」に関するお話。
これはユーモア小説として片付けず、ビジネスノウハウとして結構真面目に受け止めるべきじゃないかな、と思いました。

3本とも、主人公は優柔不断な男で、相方として気の強い女の子が登場するという類型があり、異なる話ではあるのですが、同じ雰囲気でまとまった一冊になっていました。

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