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宝塚雪組「ファントム」Blu-ray視聴

歌ウマコンビによる海外ミュージカル公演ということで、機会があれば観たかったのですが、当然のようにチケット難で、残念ながら観劇はできませんでした。

もっとも演目が「ファントム」だから、そこまで本気でチケット確保に勤しまなかった、という面はあります。
楽曲自体は好きですが、作品としては特別好きなわけではないのです。
脚本は私が好きな「父と子」の話なので、キャリエールとエリックのやりとりはグッとくるし、悲劇的な結末においてもエリック個人は救いを得るので、最終的には清々しさも感じられます。ファントム誕生にちゃんと理由があるところも好き。それなのに、どことなく苦手意識がありました。
そして今回、久し振りに全編通してファントムを観て、この苦手意識の原因は、カルロッタにあると分かりました。彼女の存在が、下品且つクドく感じてしまうのです。
私は、宝塚には「清く正しく美しく」の看板を守って、安心して観られる作品を上演して欲しいと思っています。本作は、その希望に反するキャラクターが中心のシーンが何度もあるので、好感を持てないのですね。恐らく、宝塚以外で上演されたバージョンであれば、特に気にならないと思います。

また、役が少ないというのは海外ミュージカルに良くある不満なのですが、それに加えて、宝塚的には「二枚目」の役がシャンドン伯爵しかないという点が問題だな、と改めて感じました。

さて、肝心の2019年雪組版ファントム自体は、トップコンビの二強っぷりを見せつける舞台だと感じました。

まず、ヒロイン声と歌の巧さを備えていないといけない難役クリスティーヌ@真彩希帆が、「天使の歌声」と評される説得力十分だというところに、安心感がありました。
そしてそんなヒロインに対し、歌の先生として接するのに十分なエリック@望海風斗の「強さ」にも安心しました。「オペラ座に出掛けよう」での、オペラ座の真の支配者という風格は堪らないですね。

トップコンビには色々な形がありますが、この二人は対等の役者同士が、互いを信じて存分に力を発揮しているという印象があります。
私が知る、過去の花組版(2006年・2011年)は、エリックとクリスティーヌでは、クリスティーヌの方が少女めいて見えるところがあると思っていました。しかし私は、エリックは精神年齢が幼い少年で止まっていて、クリスティーヌに「母親になって欲しい」と思っていたのだと解釈しています。蘭寿とむのエリックは単独では少年らしかったけれど、クリスティーヌとの関係では、どうしても「保護者と被保護者」という印象がぬぐえませんでした。
それが、最初から対等関係であった今作では、クリスティーヌがエリックの過去を知り、素顔を見て、その純真さを母性へと昇華させていく物語に見えたので、とてもしっくり来ました。

体は成長していても、精神は子供のままという、アンバランスなエリックは、仮面を自分を保つ拠り所としているのが分かりやすく、「私の真実の愛」のシーンで仮面を外す恐怖に戦慄く姿は本当に可哀想でした。でも「仮面を外して素顔を見せて」とあんなに心を込めて歌われたら、拒めない気持ちも分かります。
対するクリスティーヌは、森のピクニックシーンでは、まだエリックの異常性にも怯んでいない様子だったので、逃げ出すシーンの説得力はどうなるのかなと思いましたが、いかに母性を持って接していても、実際の母親ではないので当然なんですよね。

ただ、クリスティーヌが上手い分、設定上は同じ歌声を持っていなければならないベラドーヴァ@朝月希和は割を食ったというか、正直物足りなかったです。

キャリエール@彩風咲奈は、きちんと大人ーー父親に見えました。
でもどこか頼りなく、ヘタレ臭が漂っていて、「エリックの物語」で毎回感じる「全部お前が悪いんじゃないか」感も半端なかったです(笑)。

シャンドン伯爵@彩凪翔は、歌うシーンがこんなにあったのか、とちょっと驚きました。
鷹揚なノーブルさがあるのは良かったかな。ただ、善良な若者であることは分かるのですが、それ以上の人物像が私には見えてこなかったです。
また、クリスティーヌとのデュエットで歌い負けしているな、と思ってしまったのが残念。役替りの朝美シャンドンの方が、まだ歌は善戦していたように思います。

前述の通り嫌いなキャラクターではあるのですが、カルロッタ@舞咲ひめは台詞にメリハリがあって、さすがの貫禄。
夫ショレ@朝美絢は、ショレという役がこんなに華やかな美形で良いのかと悩んでしまいましたが、面白かったです。彼はカルロッタを心から愛していて、本気で彼女を歌姫だと思っているんですね。従来のショレはカルロッタの機嫌取りをしていると思っていたので、この超絶ダンディの審美眼の歪みっぷりが妙に可愛く感じました。
役替りの彩凪ショレは、「オペラ座の幽霊」にちょっと怯えているのに対し、朝美ショレはリアリストで、最初から幽霊の存在を信じていない差異が個人的にツボでした。

その他では、ソレリ@彩みちるが可愛くて、ぶりっ子具合にも思わずニヤニヤ。
セルジョ&若キャリエール@永久輝せあのスタイルの良さに瞠目しました。

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