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東急シアターオーブ・ミュージカル「ピピン」13:30回(東京公演千秋楽)観劇。
http://www.pippin2019.jp

リバイバルによってトニー賞を受賞した、ブロードウェイミュージカルの日本版初演。

公式のあらすじから「若者の自分探し」の物語だと思ったので、正直、興味は惹かれませんでした。しかし、初日を観た友人から強く薦められ、チケットがまだ買えたので急遽観劇しました。
千秋楽ということもあって、客席は序盤から拍手、手拍子、歓声でホットな空気でした。とはいえ、客席が勝手に盛り上がっているのではなく、演者が客席を乗せて、盛り上がり方をコントロールしている類だったので、初見の私も取り残されることなく、この不思議なサーカスのような世界を堪能できました。
テーマは王道だし、劇中劇であることも最初から明かされているので、実はオチが大体読めてしまったのですが、本物のサーカスを見ているようなアクロバット、マジックの数々で飽きさせずに結末まで導かれました。アンサンブルの一部は外国人キャストで、日本語のセリフは大変そうでしたが、その圧倒的な技術を見せてもらえて有り難かったです。
笑いどころもたくさん盛り込まれていて、誰でも楽しい作品だと思います。
ただし、若干エロティックな隠喩や猥雑な雰囲気があるので、子供には見せ難い作品ですね。

少しネタバレを含めてシーンを語るとーー
父親殺しのシーンで、あそこまで盛り上げておいて、刺すタイミングが凄く「ハズシ」ているのが、この作品の味だなと思いました。その後、何事もなく復活させてしまうのも凄い展開ですが。
それから舞台が結末を迎えた後、テオの歌でサーカスが呼び戻される演出は、リバイバル版で追加されたものらしいですが、この最後のシーンがあることで、再び「ピピン」の舞台が始まる繰り返しに繋がるので、いい結末だと思いました。

以下、キャスト感想です。

ピピン@城田優は、大人っぽい外見の役者ですが、外国人アンサンブルと並ぶと相対的に華奢に見えるので、ちゃんと若者に見えました。特に女遊びに走る前のウブな雰囲気は、なんだかニヤニヤさせられました。二幕は、若さゆえの愚かさや横暴さに若干イライラしたけれど、フィナーレの主演から降りるみっともない姿と、その素顔を晒しても「日常」を選ぶ成長具合にホッとしました。
カーテンコールでのご挨拶は、本当に思ったことを言っているのだろうな、と思う真摯さと天然感で、微笑ましくなりました。

ダブル主演と言っても良い、本作の花形リーディングプレイヤー@Crystal Kayは、ミュージカル出演が初とは思えないパワフルな演技、歌、ダンスで、非常に格好良かったです。ミュージカル界に逸材登場ですね。彼女を抜擢したスタッフの慧眼にも、拍手したいです。

チャールズ王@今井清隆は、堂々たる王様。暴君だけれどチャーミングで、息子を想っている気持ちにグッと来ました。
継母ファストラーダ@霧矢大夢は悪女役でしたが、国王が手玉に取られてしまうのも仕方ないと思う、コケティッシュな魅了がありました。ただ、彼女が繰り返す「普通の母親で主婦」はちょっと笑いにくいネタでしたね。
そんなファストラーダに負けないのが、バーサ@前田美波里(Wキャスト)。大きな出番は一箇所だけですが、御歳を感じさせない美脚や、空中ブランコで逆さまにぶらさがりながら歌うという演出に度肝を抜かれました。
おバカな弟ルイス@岡田亮輔は、個人的にこの作品で一番好きかもしれません(笑)。

キャサリン@宮澤エマは、この作品が劇中劇であることを客席に思い出させる役目を負っていた、と私は解釈しています。未亡人キャサリンではあるけれど、同時に未亡人キャサリンを演じる下手な新人女優である、ということが伝わってくるから、終盤の結末が受け入れられるのだと思います。
非常にメタな部分を、陽性のキャラクターで上手く伝えてくれました。
テオ@日暮誠志朗(Wキャスト)は、可愛くも小憎たらしい少年。アヒルが死んでから塞ぎの虫に取り憑かれてゴロゴロしている期間の演技が、とても可愛かったです。

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