アドベンチャーゲーム「Burly Men at Sea:三人の海の男」PS4版を遊びました。
ひげ三兄弟が、謎の海図を拾ったことから冒険の旅に出る、童話調の物語。
アドベンチャーですが、テキストによる選択肢は存在せず、「誰に話し掛けたか」「左右どちらへ進んだか」などの行動で分岐していく仕様でした。
タイトル画面では、丸い枠を左右に引っ張って海図が入った瓶を見付け、これにカーソルをあわせてクリックすることでゲーム開始。ここで、一切の説明なしになんとなくゲームの進め方を理解させて、そのまま取り敢えずお話の中に引っ張っていくのが本作の味だな、と思いました。
画面枠を右へ引っ張ると右側が見えて三兄弟もそちらへ向かい、扉をクリックすれば開けて建物の中に入り、人をクリックすれば会話します。
冒険に出たものの、船は鯨に飲み込まれーーという形で、予想外&奇天烈な波乱万丈の旅が待ち受けています。
しかしゲームオーバーはなく、正解も間違いもなく、ただプレイヤーのとった行動に応じて物語が紡がれていきます。
三人の辿った道のりが海図に現れ、更に「本」として本棚に記録されていくのが、個人的には凄く好みでした。
実は、冒険が終わると最初の地点に戻るというループ形式になっていて、明確な「終わり」がありません。三兄弟がどんな旅をするか、一日、寝る前に一編の短編小説を読むような気持ちでプレイできたら良さそうです。
全体的には「動く絵本」という印象で、言葉選びは詩的で心地よいです。
例えば「地質学的驚異」と遭遇したシーン。
とまれ。声は深く、大地と同じくらい年経ていた。三人と岩は互いを見つめあった。
しばしの沈黙の後、それがふたたび口をきいた。おまえたちは、ちいさいな。
なんとも素朴な口ぶりに、三人も少し気がゆるんだ。「そういうあんたは相当大きいな」いさまし屋はそう言ってみた。
ありがとう。小山はとどろく声で短く答えた。
このノンビリとしたテンポ感、読み聞かせして欲しくなりますね。
3兄弟は見分けがつかないけれど、せっかち屋、しっかり屋、いさまし屋という名で性格がハッキリ付いていて、愉快なトリオです。先走ったり、ちょっと諍いになっても、三人協力しながら楽しく冒険して行きます。
今回の冒険で特に三兄弟のおバカさと絆を可愛く感じたのが、大嵐で人魚と会ったシーン。
一瞬の稲光があたりを照らし出した。「人魚だ!」いさまし屋は叫んだ。「海の中に女の人魚がいるぞ、何人も!」
その叫びが終わるやいなや水音がした。せっかち屋が海に飛び込んだのだ。
「あのばか、脳みその代わりにワカメでも詰まってるんじゃな…」しっかり屋が言い終わらないうちに二つ目の水音がした。深々とため息をつき、しっかり屋も後を追った。
一回の冒険は15分くらい。
正直、ゲーム性はほとんどないと言っても過言でなく、メッセージ性と独特のアートとサウンドに価値を見出すべきタイプのインディー作品。前述通り、絵本として考えるのが相応でしょうか。
おすすめはしないけれど、別の出会いを求めて、もう一度航海に出たくなる作品ではありました。