シアタークリエにて、ミュージカル「Little Women -若草物語-」13:30回。
https://www.tohostage.com/littlewomen/index.html
オルコット原作の「若草物語」「続・若草物語」を一本にまとめた作品。
私は子供時代に「若草物語(岩波文庫)」を読んだのみですが、機会があって1949年版の映画「若草物語」を見たことがあるので、「続・若草物語」の内容も一通り把握した状態での観劇となります。
2作をまとめて2時間半に収めるため、ストーリーはどうしても継ぎ接ぎが目立つ作り。
エピソード間の時間は数ヶ月単位で飛ぶので、時間経過が分かりにくいのがこの形式の弱点ですね。
とはいえ、話の流れがわからないほど酷い継ぎ接ぎではありませんでした。どちらかと言うと、原作を読んでない友人が、二幕が一幕オープニングの後の時系列に戻った、ということに混乱していたので、年月と地名の投影があったら良かったかも知れません。
継ぎ接ぎに伴う改変も多く、初っ端、出逢ったばかりのローリーに一人で貧しい一家にモミの木を持って行かせて、マーチ家の女たちはお父様からの手紙を読むという下りに突っ込みたくなりました(笑)。
それ以外の改変は、原作の記憶が朧ということもあって、特に気になりませんでした。
ジョーとエイミーの喧嘩と仲直りには尺が割かれていたし、ジョーとベスの姉妹愛もじっくり描かれていたので、姉妹の絆はちゃんと見えたと思います。
ベスとローレンスさんは、超高速で他愛なく仲良くなってしまったけれど、ミュージカル表現として理解できる改変でした。
逆に、ローリーとの友情はもうキチンと見せないと、ジョーがプロポーズに拒否反応を見せた理由が分からないと思いました。それに、二幕でベスが死んだ後にエイミーとローリーの婚約発表を挟んでからジョーの嘆きがあるせいで、最初、ジョーがローリーを失って後悔しているように勘違いを誘発する流れで戸惑いました。もちろん、台詞でベスの不在に泣いていることは分かるけれど、これは仮に原作がどうだったとしても、地の文がない舞台では、順番を入れ替えるべきエピソードでしょう。
というわけで率直に言うと、主役なのに、ジョーの魅力が伝わってこない脚本だったと思います。言動だけ見ていると、ジョーは傍迷惑で自分勝手で、しかも喚くという面倒臭い女で、なぜローリーやベア教授がジョーに惹かれたか、マーチおば様がジョーに目をかけていたか、ピンと来ませんでした。役者は好演していたので、脚本の問題だと思います。
原作は名作だと思っているので、脚本は全体的にちょっと残念でした。
と言いつつも、ジョーが「若草物語」を書き始めるシーンはボロ泣きしました。
予想外に「笑いどころ」があり、また客席の沸点が低くて、そこは笑うシーンなんだ、と驚かされましたが、お陰で重くなり過ぎずに楽しめた気もします。
楽曲はキャッチーでないので印象には残らなかったものの、生演奏で素敵でした。
四姉妹は全員、とても可愛かったです。
ジョー@朝夏まなとは、物語を書いている時の様子が一番魅力的に見える、という点で、正しくジョーでした。
ただ喉の調子が悪いのか、歌はハラハラする箇所があり、特に一幕ラストの独唱が完全に掠れてしまったのが残念でした。
メグ@彩乃かなみは長女然とした振る舞いで、所作も一番綺麗だったけれど、メグとして見ると物足りない役でした。脚本上、四姉妹で一番軽んじられたのはメグじゃないかしら。「虚栄心が強い」と言われても、そんなエピソードなかった、という感じ。
正直、ジョーの書いた小説を劇中劇として展開する中での主人公の少女役の方が味があって良かったです。剣を振り回すところは、笑ってしまうくらい可愛かったです。
ちなみに、妹たちとの実年齢は結構離れているのですが、普通に四姉妹に収まっている愛らしさは凄いなと思いました。
ベス@井上小百合(乃木坂46)は素晴らしかったです。可愛いし、声がよく通って、歌も充分。ローレンスさんとのシーンでは、人見知りな性格と、不当だと思えばそれに立ち向かう毅然とした少女の美しさがキチンと見えました。
病弱設定が二幕で突然提示されたりするのは、やっぱり脚本の不備のように思いますね。
同じくアイドルのエイミー@下村実生(フェアリーズ)は、台詞回しがちょっと棒読みで、1幕の間ならそれが子供らしさの表現と受け取れるのですが、レディに成長した2幕でも大差ないので、もったいないと思いました。エイミーのキャラクター自体は、とても合っていたと思います。
お母様@香寿たつきは、上品で美しく愛情深く歌が上手いと言う理想的なお母様で、文句の付け所がありませんでした。そもそもこの作品、女性陣でジョーの次に大きな役は、ソロ曲が2回あるお母様ですね。
マーチおばさま@久野綾希子は、かくしゃくとして素敵。価値観の違いでぶつかり合うけれど、愛情深い女性ですよね。カーク夫人との演じわけもお見事でした。
ローリー@林翔太は、もう少し複雑な男の子だと思っていたら、予想外にバカっぽいキャラクターでしたが、この作品の明るさを担っていたと思います。朝夏まなとより背が低く見えて、その為に「弟」という印象が強く出ていました。エイミーとはお似合いでした。
ローレンス氏@村井國夫は、怖そうに見えてお茶目さもある非常に素敵な紳士。
ブルック先生@川久保拓司は、舞台上の役割がメグとの関係に終始しているので、分かりやすいキャラクターで可愛かったです。ファーストネームが「ジョン」なせいで、「ジョー」と聞き間違えやすいのは、致し方ないですね……。
ベア教授@宮原浩暢は、ビジュアルと芝居は良かったのですが、歌詞が聞き取れない時がチラホラあり、ミュージカルとしてはちょっと困りました。バリトンの響く声は素敵なのですが、響き過ぎて篭ってしまうのかな……。
みんな歌は上手だし、キャラクターに似合っていて、とても良い座組でした。
10人しかいないとは思えないくらい充実していました。
余談ですが、グッズがとても可愛くお洒落で、初めて観劇グッズで欲しいと思いました。