Nintendo Switch版「moon」を遊んでいます。
現在、ラブレベル28(愛の大統領)なので、ストーリー終盤と思われます。
1997年発売の「アンチRPG」代表作の移植版。
長年、遊んでみたいと思っていたので、満を持してのプレイです。期待感が強すぎたので、実際に遊んだら拍子抜けする可能性も危惧していましたが、夢中で楽しんでいます。
物語としては、遊んでいたゲームに似た世界ムーンワールドに「透明人間」として入り込んでしまった主人公が、勇者が経験値稼ぎのために殺戮した罪のないアニマルの魂を救いつつ、現実に還る手段を探すという展開。
割とノーヒントに近いので、アニマルの魂を掴まえるのは結構大変ですが、基本的には同じステージ内に死体と魂があるので、できることを試したり、とりあえず時間経過を見守ったりして攻略できています。
序盤はオープニングで遊ばされるゲーム内ゲーム「MOON」(いわゆる「フェイクムーン」)のシーンが再現されて、その裏側を見るという面白さで引っ張り、中盤以降は世界の謎で引っ張るという感じの構造。道中に「謎が解明する気持ちよさ」が適度に散りばめられているので、飽きずに進めます。
かなりギリギリのパロディネタや、風刺を盛り込んでいるので、かなりプレイヤーを選ぶゲームではあるけれど、私は好きです。
もちろんPS1から単純移植のため、画像は少し粗いし、操作性で不便な面は多々あります。複数個欲しいアイテムがあるのに、買い物は前後のセリフを毎回聞きながら、一つずつ購入するしかないとか、ターゲットが合わせにくいせいで、間違って話し掛けて同じ会話を何度も見る羽目になるとか、細かい不満は多々あります。レトロゲームだと分かっているから許容するけれど、このくらいは移植に当たって改善しても、ゲーム性に影響はないと思いました。
また、テンポ感がゆっくりしていることは覚悟していましたが、画面を見守りながら、何かが起きるのをじっと待つという局面もあり、時間を進める機能がないのは現代のゲームの快適さに慣れていると辛いです。
バリバリ島への1日半の旅行は、まだ時間経過に伴う風景の変化もあったから画面を見守ったけれど、夜だけ巨大化するサボテンから降りられなくて、一晩過ごした時は、Switchを置いて放置してしまいました。
月に行くには四日と半日掛かるらしいですから、攻略の前に、のんびりする精神を養うべきかもしれません。
他方、主人公の足が遅いことは、その解消策としてラブレベルを上げて行動時間を伸ばす意欲に繋がっているので、否定すべき要素ではないと思います。
ラブレベルが上がると、ちょっと面白いキャッチコピーがつく点も、レベル上げの楽しみに繋がってますよね。
グラフィックは、ブラウン管の「滲み」を感じるようなドット絵とクレイアニメ風のアニマルで、最初は少し見難いと思いましたが、遊んでいるうちに見慣れました。この光と影の表現は下手に弄ると別物になって、個性が薄れそうだから、単純移植で正解だったのだと思います。
夢の中には非常にサイケデリックな背景もあって、ちょっと怖い印象もあるけれど、怖がらせることが目的ではなく、アート表現だと受け取れました。
ムーンワールドを歩き回って、癖のありすぎるキャラクターと知り合い、世界を堪能するという点が、この作品の肝だと感じます。
変態ばかりだけれど「ラブ」に溢れていて、優しい世界でもあるムーンワールド。自分がこの世界に吸い込まれるのは勘弁して欲しいけれど(笑)、救いたいと思えます。
ちなみに、私が今のところ一番好きなキャラクターは、大阪弁で喋る鳥ヨシダです。
秘密を暴いて一番強烈だったのは、フレディかな……。名前の由来はそれだったのか!と思いました。
BGMは最小限で、お気に入りのMDをセットすることが推奨されていますが、個人的にはMDはつけず、この世界の音を聞きながら歩き回る方が世界に浸れて良かったです。
キノコの森で車のクラクションや道路の音が聞こえる演出は、不思議とノスタルジックな気分になり、自分の原風景は「鉄のカタマリが走る道」で囲われた都市なんだな、と改めて気付かされました。