アドベンチャーゲーム「The First Tree」PS4版をプレイ。

The First Tree

夜中に目が覚めた男ジョセフが、自分が見た「3匹の子供を探す母キツネの夢」を妻レイチェルに語りながら、自らの親子関係を振り返るという二重構造のゲーム。

The First Tree

タイトルやパッケージのイメージアートを見る限りは、キツネが主人公に見えますし、私もそう思っていたのですが、購入前にWebで検索したら「男が夢の中で母キツネになっている話」という設定を確認できたので、それほど戸惑わずにプレイを始めることができました。

雪山から始まって、草原や森の中、ファンタジックな夜空など、夢の中なので結構な大冒険になります。トゥーン調ながら幻想的な色使いのグラフィックはハッとするほど美しく、広大なステージを動物と化して駆け巡る心地良さはバッチリ。

The First Tree

語り部である主人公の思い出の品を発掘する探索要素と、蝶を集めて大ジャンプしたり、少しだけ謎解きっぽい要素もあります。
敵は存在しないのですが、ある意味フィールドそのものが敵ですね。私は広すぎて疲れました。光のヒントはあるものの、森の中だと光が見えず迷いやすいです。

The First Tree

それにジャンプの度に視点がフラフラするため、久し振りに3D酔いも発症。途中、休憩を入れて気分を回復しながらプレイする羽目になりました。
あと、夢の中とは言え「二段ジャンプできるキツネ」は、結構な衝撃でした。しかもジャンプの仕方が、物理法則を無視した感じなんですよね。二段ジャンプできる時点で物理法則も何もないのですが、動きも変なのでシュールに感じました。

母ギツネの旅が迎える結末を書いてしまうと、子ギツネたちは、狼に襲われて全員死んでいます。そして最後の1匹の死体を見つけて項垂れる母ギツネに対し、原始の生命を司る「最初の木(The First Tree)」が質問をする、というところでプレイヤーに回答権が与えられます。

The First Tree

正直これは「そう来たか!」と唸りました。道中に集めた光が文字数制限になっているのは、取って付けたゲーム性だと思ったけれど、なんと答えるかは真面目に考えさせられました。
その上、これが結末かと思っていたら、予想外の続きがあって驚きました。

一方、夢の世界をプレイヤーに探索させるのと同時にジョセフが話しているのは、さほど難しい話ではなく「疎遠になっていた父親が殺された。生きている内にもっと伝えることがあった」という悔恨です。ただ、私は最初の雪山ステージをほとんど探索せずに進んでしまったこと、語られる思い出が断片的であること、そもそも聞き手であるレイチェルが既知の話は説明されないこと、中盤以降は時系列も前後することなど、難解になる要素が重なっていて、しかもあまり楽しくない話なので、途中は混乱もしたし、退屈に感じました。
こんな自分が家族を持ってもいいのだ、とジョセフが自己肯定に至って鹿(レイチェルと、まだ見ぬ子供たちの象徴)の楽園に一度は辿り着いたのに、その直後が暗いステージだというのも、私には違和感がありました。普通のゲームだったら、父の死のエピソード後に、レイチェルと「家族」になったことを感謝するこの会話で締めるところですよね。

The First Tree

そう思ったので、プレイ中、崖を降りて最後の子ギツネを探す間はモヤモヤしました。でも、本作のクライマックスは前述の通り全然違うところにあり、そしてそれは幻想的なラストだったので昇華されました。

インディーゲームということもあり、日本語対応しているのは字幕のみ。それなのに初期設定は字幕OFFです。私はプレイ前に設定関係をチェックする人間なので気付けましたが、冒頭のやり取りを聞き逃すとより理解し難い話なので、ONの方が良かったのでないかと思います。
また「解説モード」という設定があり、これはなにかと思ったら、各地点でゲームの制作者による解説が聞ける機能だったようです。

The First Tree

……推測なのは、解説部分には字幕すらないためです。
実は解説モードONでプレイし始めると、ゲーム開始直後の台詞が解説モードの音声再生だったりします。結果、いきなり英語で話し掛けられたので「日本語対応してないゲームだったか?」と焦ってしまいました。道中に解説がある地点は吹き出しアイコンが表示されますが、これに関しても本作のアートを損なっていると感じました。それに聞き取れた範囲では設定関係の話をしていた気がするので、リスニング力がある方でも、初見プレイ時はOFFの方が良いと思います。もっとも、解説を聞くために2周するか?と問われると微妙です。

ボタン操作は、私が苦手な「決定」が「×」ボタンで、「キャンセル」が「○」ボタンの仕様でした。まあ決定/キャンセルを問われる局面はほぼないのですが、メッセージ入力の時に何度か操作ミスして悔しい思いをしました。

特定のアクションが必要な時は、イラストで操作説明を兼ねたヒントが表示されます。こちらは本作のアート性を損なわないUIで、とても良かったです。

The First Tree

まあ、ほとんどはヒントなしでも想像がつくのですが、最終ステージで「テントの中に入る」ことだけは、ヒントが表示されるまでなにをしたら良いかサッパリ分からず、本気で困りましたけれどね。テントを見つけたのに、そのまま敷地をぐるりと一周して時間を無駄にしたお馬鹿プレイヤーは私です。

いわゆる「雰囲気ゲーム」であり、ゲーム性はほぼないので、その類が嫌いな人は絶対に遊んではいけないゲームです。
その一方で、本作のアート表現は第一印象通り素敵ですし、あの「最後の仕掛け」を他のゲームでは実装できないだろうことを考えると、インディーだからこそできる実験的な作品だと思いました。こういうゲームだったのか!という想像と全く違う衝撃があり、なかなか面白かったです。人には余り勧めませんが、ゲームは遊んでみないとわからないと改めて思いました。

The First Tree

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