Switch版クリッカー&ノベルゲーム「A HERO AND A GARDEN」(ヒーロー アンド ガーデン)をプレイ。
ストーリークリアまで1時間半程度。
販売価格から考えても、文庫1冊分くらいの内容として設定しているものと思います。
ある程度覚悟していましたが、ゲームである必要性を感じないほど、ゲーム性はありません。
町の修理に必要な金を稼ぐ、というプレイ目標は設定されています。となれば、いかに効率よく金を稼ぐか考えさせることでゲーム性を与えられそうですが、金を稼ぐ手段は、庭で規定量のベリーを収穫してイベントを発生させることだけです。納品するベリーの品種によって、どのキャラクターのイベントが進むかという違いはあるものの、結局全てのイベントを発生させないとクリアできません。
となると、効率よくベリーを収穫できるようにするゲーム性になっても良さそうですが、ベリーの成長速度は品種ごとに決まっています。一応、1つの茂みにベリーは3個までしか実らないので、貯まる前に1つずつ収穫するか、3つ貯まったら籠で即時収穫するのが効率的ですが、いかにプレイヤーがベストな収穫タイミングを狙っても、クリアまで合計して数分のプレイ時間差になるかどうかです。
では逆に、放置してイベントだけ見ることは可能かというと、庭を画面表示していないとベリーが実らない点と、お手伝いに収穫を依頼できるのは1つの茂み、且つ、収穫速度が極めて遅いという仕様から、現実的ではありません。
結局、次のイベント発生に時間制限をかけているだけです。スマホゲームでスタミナが貯まるのを待ってるようなもので、正直、クリッカーゲームと名乗っていいのかも疑問でした。
そんなわけで、ゲームとしては全く評価し難いのですが、キャラクターの可愛さを含む物語の魅力は抜群でした。
魔女に負けた勇者が、自分が破壊した魔物の街の修繕費を庭の世話をして稼ぐ中で、自分の目に映る世界を広げていく、道徳的なお話です。
見た目の違いなどで差別が始まり、話し合わないことで相互に思い違いが生じーーと取り上げているテーマ的には、先日遊んだ「コーヒートーク」と通じるところがあります。ジェンダーフリーに関しても踏み込んでいるのは驚きました。
勇者は、口が悪いし高圧的な姿勢で、最初の印象は悪いのですが、ずっと付き合っていくうちに、ただ無知だっただけで、根は驚くほどいい子だとわかり、好きになれました。
修繕費として高額を要求されても、その金額に驚きはしても、ぼったくられているとか悪意の介在を考えず、そんなに金がかかるほど被害を与えてしまった、と考えるくらい善良です。結果として魔物を傷付け、町を壊してしまったけれど、悪意を持ってやったわけじゃないんですよね。無知は罪と言うけれど、サイラスは無知を自覚できない環境にあっただけで、自分の無知を知ると、ちゃんと反省して改善していくので、素直に応援できました。
勇者を取り巻く人々や魔物も、なんだかんだ優しい面々です。
最初から勇者と接していて、最悪の印象から次第に変化していく流れがプレイヤーと完全に一致するイェン先生、球根姿が可愛いルタブー、意外とちゃっかりしているネルなど、どのキャラクターも可愛く感じます。
一番思い入れ深いのは、最初のお友達のエラです。
納品するベリーごとに関係が進展するキャラクターが決まっていて、イベントが終わると、ほぼ登場しなくなって、誰も引き取らないベリーが貯まっていくのが残念でした。エラの分のベリーなんて、危うくカンストするところでしたよ。
翻訳も悪くないです。
細かいことを言えば、助詞・助動詞が怪しいところは何箇所かありました。例えばこのシーンは、「怪我をしなかった」ではなく「怪我をさせなかった」の方が適切ですよね。
お姫様関係は結構訳がフワフワしていて、見所でお姫様がいきなり「〜大丈夫だ」と男前な口調になったときは、笑ってしまいました。しかし、理解の妨げになるような誤訳はありませんでした。
なにより、フォントがファンタジックで牧歌的な世界観に合っていて感心しました。
ただ、日本語を選んだのに、タイトルや一部画面が英語のままなのは、設定ミスしたかと思って慌てました。