アイドルマスター SideM GROWING STARS 鋭心から秀のスマホ時間についてのLINKがきた記念SS

GROWING STARS

 明け方に、目が覚めた。

 秀は薄暗い天井から手元のスマホに視線を移し、時刻がアラームの鳴る1時間以上前であることを確認した。
 眠る寸前までスマホを弄っていたから、眠りが浅かったのかもしれない。
 夜なかなか寝付けず、もう一度画面を開いて、そのまま夜更かしすることは珍しいことでなかった。起きている間は、スマホかパソコンの画面を見ているのが秀のスタイルだ。いまもほとんど無意識のうちに右手がロックを解除し、目はネットに溢れる人々の言葉を拾い始めている。
 いつも通り長方形の光を浴びながら、頭はいつもと違うことを考えた。
 ーー満足に眠れなかったことを鋭心先輩が知ったら、なんと言うだろう。
 あの人は、秀がスマートフォンを操作している時間が長いことを気にして、プロデューサーに相談したらしい。プロデューサーは上手いこと鋭心の懸念を晴らすと同時に、秀の方にも忠告をしたのだ。
 ここ最近、事務所やレッスン教室でスマホを弄っていると鋭心の視線を感じたのはそのせいかと、秀は納得し、同時に少し笑った。2学年しか違わないのに、あの人は秀の保護者のつもりなんだろうか。
 だが、鋭心のそういう振舞いは秀を不快にしなかった。むしろ面白いと思う。
 鋭心は、天才・天峰秀の有能さを疑っているわけでない。やりたいことを止めようとしているわけでもない。仲間として、ユニットのリーダーとしても認めてくれている。
 ただ、天峰秀を16歳の後輩として扱うのだ。
 プロデューサーや事務所の大人たちの気遣いとも違うそれはちょっと新鮮で、鋭心が学校も違うのに先輩らしいことをする度に、いつも腹の中に擽ったい気持ちが湧き出て、秀は笑いたくなる。

 ふいに、LINKを送ってみようと思った。
 あの人はきっと時間通りに生活しているから就寝中かもしれないけれど、もし起きていれば、無視はされない。二度寝したくないと言えば、他に用事がない限り1時間の無駄話にも付き合ってくれるだろう。たぶん、そういう人だ。
 ーー少なくとも、秀の言葉が無視されることはない。
 早速メッセージを打ち込んだ秀は、5分だけ画面を表示したまま待つことにした。闇に吸い込まれる言葉を投げた夜のあとでも、こんな風に、既読が付くのを楽しみに待てる朝があることを密かに感謝しながら。


百々人が夜中に目が覚めて物思いにふける話を書いていたのですが、少し長くなってしまったので、同じ要素を使って秀バージョンで書いた、ヤマもオチもない掌編。
鋭心が何を考えているのか分からないため、代わりに、秀や百々人から見た鋭心を書くという手法が確立しつつあります。といっても、C.FIRSTの子たちと知り合ってまだ3週間しか経っていないから、まだ秀や百々人の解釈も変わっていくと思います。

問題の、秀のスマホ時間について鋭心から相談されるLINKは、「先輩通り越して父親気分か?」と思いました。
鋭心はIT音痴でもないけれど、自分の利用時間と比較しない辺り、自分が平均的な男子高校生でないと自覚してるんですね。

なお、鋭心のLINK内容が秀にバレてますが、うちのプロデューサーは自分なりの忖度で他人のLINK内容をバラすので、百々人の果物LINKの話も、たぶん鋭心に知られてます。

GROWING STARS

……百々人が知ったら泣くぞ。

コメント

  • コメントはまだありません。

コメント登録

  • コメントを入力してください。
登録フォーム
名前
メール
URL
コメント
閲覧制限
投稿キー
(スパム対策に 投稿キー を半角で入力してください)