アイドルマスター SideM GROWING STARS 百々人と秀で鋭心話

GROWING STARS

あの日、鋭心と百々人が先に出逢った意味を繰り返し考えています。

 こういうと意外に思われそうだが、花園百々人は、ユニットメンバーとの交流を大事にしている方である。
 315プロはユニット売りを基本路線としていたし、ファンはメンバー同士の仲が良いと喜ぶ。となれば、仕事だけの付き合いに徹するより、ある程度交流した方がアイドルに相応しい。また、人の輪の中で愉しげに過ごすことは百々人の得意科目だったから、ユニットで集まったときに他愛ない雑談で盛り上がるのは苦でない。レッスン帰りに買い食いするのも、オフの日に三人で映画を見たりするのも、インタビューやMC時に披露するエピソードになるし、プロデューサーが付き合ってくれることもあるので、百々人としては歓迎すらしていた。
 だから、C.FIRSTの三人の交流なスムーズに進んでいたと思う。
 しかしそれが天峰秀との一対一の交流になると、妙に手強かった。
 新人であるC.FIRSTには、各種のレッスンが課されているが、学校と学年が異なる三人だから、揃わないこともままある。そんなとき、集まったのが百々人と鋭心の二人であれば問題ない。しかし秀が相手だと、会話が続く話題探しは難問となる。
 まず、季節の話題は無難だが、頻繁に顔を合わせていると毎回それでは済まない。趣味や休日の過ごしかたは鉄板だが、百々人はなんとなく、面白みのない自分を曝け出すことが嫌だった。となると、秀の話を拝聴することになる。だが、彼が好む音楽やアニメの話題を振れば勝手に話してくれるかと思いきや、幾日かすると百々人がさして興味を持っていないことを察したのか、秀の方から適当なところで切り上げるようになってしまった。
 そうなると、2人が共通して関心があり、話題にできるのは、アイドルの仕事か、プロデューサーや鋭心のことになる。
 仕事の話では、仲良しアピールには程遠い。また、雑談のつもりが打ち合わせになってしまうことが発生したので、三人揃っているときにするべきだ、と学んだ。
 プロデューサーの話は、最初のうちは盛り上がった。しかし秀がプロデューサーとゲームイベントに行った話などを聞くと、プロデューサーの期待は秀により多く向いているのでないかと被害妄想に囚われて、これは百々人から避けるようになった。
 必然、百々人と秀が集まった時は、その場にいない鋭心について話す比率が高くなった。
 鋭心についての話はお互いに気楽だった。真面目一辺倒に見えて、妙な面白味と浮世離れしたところのある男だから、それぞれ相手がいない時に鋭心とどんな話をしたかだけでも、十分盛り上がる。また、秀はやたらと人を褒める癖があるらしく、百々人は反応に困るのだが、鋭心の話をしていれば秀の賞賛の矛先は鋭心に向くから、百々人も素直に同意してやることができる。
 だがその日、秀の言うことに百々人は直ぐ頷けなかった。
「いや、鋭心先輩は反対しないでしょ。校則違反とか犯罪とかでない限り、俺たちがやりたいって言うことを止めるタイプじゃないですよ」
 秀がいったん言葉を止めたのは、そのタイミングでスポーツドリンクを飲んだためだったが、聞き手の反応が全くないことに不思議そうな表情を見せたので、百々人は少し慌てて微笑んだ。
 この話題まで禁止事項だと誤解されたら、いよいよもって秀とのコミュニケーションが困難になってしまう。
「ーーまぁ、そうかな」
「そうですよ。あの人は、自分の意見を押し付けたりしないでしょ」
 曖昧な反応が不満だったのか、秀は大きく首肯した。かと思うと、急にどこか不安そうに声を潜めた。
「正直言うと、はじめは、俺たちもっと衝突すると思ってたんですよね。俺、生徒会でもユニットでも、割と一人で決めてから伝えちゃってますし」
 確かに秀は、独立独行と評するしかないところがある。それは、自分の意見が一番だと自信を持っているからだろうし、実際天才と自称するだけの内容になっている。
「……僕は、指示される方が気楽だし、アマミネくんがリーダーとして引っ張ってくれるのは頼もしいよ」
 自分の意見が参考になるとは思えないから、秀に任せられるなら任せたい。そんな下心のある言葉だったが、秀は額面通り受け取ったらしい。少し照れを隠すように、百々人先輩はそんな感じしました、と生意気な顔で笑った。
「けど、鋭心先輩は最強の生徒会長とか言われてるし、絶対口出してくるタイプっぽいから、ーー意見が対立したりしたら嫌だな、と思ってたんで、まぁちょっと安心しました」
 そうか、アマミネくんは知らないんだ。
 不意に百々人は気付いた。
 確かに眉見鋭心は、他人に自分の意見を押し付けるような人間ではない。打ち合わせではよく最初に発言して議論の道筋を作るが、そこで結論まで進めることはなく、必ず百々人や秀の意見を聞く姿勢を見せる。自分と異なる意見も、その理由を聞いて納得すれば素直に受け入れる柔軟さがある。
 でもあの日、渋谷の街角で百々人を引き止めた彼は違った。
 ーーなぜ敗れた人間の想いを背負わない。
 彼はそう言って、自分と同じ高潔な生き物であることを、百々人にも強要したのだ。だから百々人は、外野から百々人の生きかたを詰る鋭心を、堅苦しい上に傲慢な男だと思った。
 しかしその後に知った鋭心は、気さくで話しやすく、彼との会話で百々人が嫌な思いをすることは一度もなかった。それでこちらから「仲良くなりたい」なんて思ったものだから、当初の印象をすっかり忘れていた。
 もしかしたらあの日、マユミくんにも、初対面の僕をあんな風に詰りたくなるような出来事があったのだろうか。
 一瞬だけ百々人はそんなことを考えたが、仮にそうだったとしても、知りたいとは思えなかった。
 百々人がアイドルになる前の自分を知って欲しいと思わないように、鋭心もあの日のらしくない自分を他に知られたいとは思っていないはずだ。
 だから、秀もプロデューサーも知らないままで良いし、百々人も深入りはしない。それがユニットとして楽しく交流する、いい距離感のはずだ。
 けれど、トロフィーを捨てようとしていた百々人を、鋭心は忘れてはいないだろう。そして初対面の百々人に持論を押し付けてきたあの日の鋭心は、まるで幻のように現実味が薄いまま、確かに百々人の記憶の中に存在していた。


エピソードゼロで色々明かされる前に、現在の解釈だとか、考えたシチュエーションを入れていたら、とっ散らかった話になりました。前半と後半で2本にすべきだったかも知れません。
私の書くSSは、物語というより、自分のキャラクター解釈を形にしているだけなので、このような形のままになりました。

鋭心の人となりが見えるほどに、1話で初対面の百々人にノブレス・オブリージュを説いたのは、鋭心らしからぬ言動だという違和感が生じました。そして、その違和感には百々人だけが気付けるのだなと思って出来上がりました。

前半に設けた秀と百々人の噛み合わない描写は、単に私の趣味です(笑)。
本作では百々人が文句をつけているけれど、映画に誘う一件のLINKで、秀も百々人との間に壁を感じているのが伝わってきます。というより、親友の問題があったから少し人付き合いが不安なんでしょう。

GROWING STARS

百々人は秀の肯定感を受け入れたら屈強な精神になれるし、打ち解けたら良いコンビになると思っています。けれど、それまで一方がコンプレックスを抱え、一方が怖いと思いながら交流するのは、なかなか大変でしょうね。

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