2022年7月27日ロマサガRSに実装された、グスタフ新スタイル(水着)を記念して、ロマサガRSリアム編ストーリー軸のサガフロ2勢の情景。

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 妙な世界に来てしまったらしい。それを、二度と会えない人と再会できる幸運と喜べればよかったのだが……。
 グスタフは、己の失態に顔を覆った。

 ーー数時間前。
 同じサンダイルの人が良いだろうと言ってパイロットが案内役に呼び出してくれた麗人は、グスタフの顔をまじまじと見つめた。
 初対面のはずである。が、この世界に招かれた異界の戦士たちは、同じ世界の生まれでも同じ時間軸の人物とは限らないそうだから、未来の己が出会った人なのかもしれない。相棒のロベルトがグスタフと知り合う前だったらどうしようと懸念していたが、自分が相手と知り合っていない場合もあるのか、と合点したところで、レスリーと名乗った彼女が口を開いた。
「失礼だけれど、ヤーデ伯に所縁の方?」
 違った。どうやら生家を知る人であったらしい。
 家名を捨てた身としては答え難く、グスタフは視線を逸らせた。
 幸い、レスリーは聡明且つ優しい女性だった。初対面で踏み込んだ質問をしたことを謝ると、本来の目的である侯国の案内に移る。戦士たちに貸与されている宿舎、クラヴィスの作戦会議室、医務室、うまい料理屋、異国風の道場、不釣り合いな美女が店番のショップーー。
 そして最後に、レスリーは鍛治屋を紹介すると告げた。サンダイルの人間ならば、グスタフが鋼の剣を帯びていることは一目瞭然だろうが、鍛治屋にまで連れて行ってくれるということは、アニマの使い手でありながら鋼を厭わない人らしい。グスタフ自身もアニマと鋼の両方を使うが、まだ奇異の目で見られることが多い。やはり未来の人なのだろうか。
 そんな風に彼女と己にどんなつながりがあるかを考えていたものだから、鍛治屋の扉を開ける瞬間まで、間抜けにもグスタフは鍛治屋と「彼」を結びつけていなかった。
 鍛治屋にいたのは、二人の若者だった。
 まず一人、戸口に顔を向けていたため最初に視線が合ったその人は、驚くほど強い引力でグスタフの視線を奪った。
「例の新しい戦士か。俺はギュスターヴ。人手が足りないんでここを任されてる」
 鋼のギュスターヴ!
 グスタフの時代によく知られている彼は、コインに刻まれた威厳ある征服者ギュスターヴ13世の姿だが、グスタフは彼がヤーデに滞在していた頃に描かれたという、若い頃の肖像画を見知っている。目の前の彼は、あの肖像画とそう変わらない年頃に見えた。
 そしてもう一人。
「ああ、サンダイルの人だと聞いたが……」
 カウンターから振り返ったその人は、懐かしいアニマをしていた。件の肖像画の持ち主であり、グスタフに大叔父の名を与え、顔を見ては、彼と似ていると寂しそうに微笑んでいた。ーー敬愛する祖父、ケルヴィン。
 こちらはグスタフと同じ歳の頃に見える。最初はグスタフのいでたちに飲まれたようだったが、顔を見ると、珍妙な味のする料理を飲み込んだような表情に変わった。わかりやすい動揺を見ると、あの祖父にも己と同じくらい未熟な時代があったのだと分かって、落ち着かないものがある。記憶が確かなら、祖父は覇王より年下だったはずだから、この二人は別の時代からこの世界に招かれたのだろうけれど、それでも一緒にいる辺り、共有する記憶はなくても、親友という関係性は変わらないのだろう。グスタフは友達を持ったことはないが、デーヴィッドと自分に置き換えてみれば分かるような気がした。
 成程、この二人を知っていたなら、レスリーがグスタフを見て戸惑う理由もわかる。
「背中のそれ、大剣を二刀使うのか? すごい膂力だな! よかったら剣も見せてくれないか」
 唯一、アニマを感じ取れないギュスターヴだけが、ただサンダイルから来た新しい戦士だと思って、グスタフの得物に純粋な興味を示していた。
 だが、グスタフはこの好奇心にこそ狼狽した。
 背中の二刀は、どちらもギュスターヴと関係がある。
 一振り目は、ギュスターヴが自ら鍛え、愛用した鋼の剣だ。彼がこの剣を作ったのが何歳の頃かはさすがに知らないが、仮に未来のことでも、自身の手になる剣に気付く可能性がある。だが、こちらはまだ良い。
 問題は二振り目、ギュスターヴが王家を追われた原因のクヴェルである。継承者以外が手にすれば業火で焼き尽くされる。アニマのないギュスターヴであれば、生きたまま触れることはできるのだろうが、それがかつて継承の儀式で手にした剣だと気付かない保証はない。
 せめて、この呪われた炎の剣を持たない身一つで召喚されていれば、ケルヴィンをお祖父様と呼び、身を明かしてもよかった。だがヤーデの縁者であるグスタフが、フィニー王家の継承者の証を持っていれば、その経緯ーー彼らの未来に待つ悲劇に気付かれない筈がない。
 グスタフは祖父に目をやった。グスタフの記憶にある、穏やかだが常に陰があったアニマが、今は未来になんの不安もなく、健やかでいる。その眩しさを損ねることは許されない、と思った。
 しかし日頃から意思の疎通をロベルトに任せきりにしていたグスタフは、彼らに悪感情を持たれずに断る術が全く思い当たらなかった。故にーー
「……用事を思い出したので、失礼します」
 案内の礼も言わず、その場を立ち去ったのである。

 そのまま人のいない森まで逃げた己の未熟さに打ちのめされたグスタフは、見知った名の男にピンと来たプルミエールが探しに来るまで、その場で落ち込んでいた。

 一方、残された3人の中では、ヤーデ伯家のアニマとギュスターヴに似た顔の持ち主に関して、トマス伯とソフィーティア様が再婚してできた子供だとか、ギュスターヴの息子とケルヴィンの娘の孫だとか、諸説あがって紛糾したのだがーーそれは、グスタフの知るところではない。


お迎えのプルミエールは、無茶苦茶呆れ顔になってるはず。
この後、髪型維持に躍起になって砂糖を買い込むグスタフから、エミリアが用途を聞いて卒倒したりする話も書きたい。……私の脳内のグスタフって、割とヘタレですね。ギュスターヴの剣を持っているということはサウスマウンドトップの戦い後のはずだけれど、覚悟が足りない。
RSの世界では、尊敬するお祖父様の子供っぽいところを沢山発見できそうです。なんせギュスターヴの方は少年期から壮年期まで揃っているから、ケルヴィンは常に振り回されること確定です。

グスタフのあの髪型が、パンクファッションとして好んで維持しているのでなく、「大叔父に似ている顔を誤魔化すため」にしていたことに驚きました。フレーバーテキストは河津ディレクターが書いていると聞くので、このスタイル解説も公式設定ということで良いのでしょう。

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そのことから、急に小景が思い浮かびました。
そして「描いたら出る」ならぬ「書いたら出る」が実現して歓喜しました。ダブル天井の直後に76連なので、ジュエル枯渇は継続ですが、グスタフ強化のためなら仕方ありません。海の主の娘編は完全に諦めることにしましたが、ログインボーナス画面がカップルみたいで笑いました。スービエが怒るぞ(笑)。

「テイルズ オブ ザ レイズ」での具現化時期の違いも面白いと思いましたが、ロマサガRSにおけるサガフロ2勢は、元ネタが複数世代を描いたお話なために、同一人物でも色々な世代から召喚されていて一層複雑です。
リアム編で鍛冶屋担当のギュスターヴは、台詞によるとソフィーティアが生きている時期なので、16〜18歳。
ケルヴィン(貴族としての務め)は読み取れる情報が少ないけれど、ギュスターヴの遊び癖に文句を付けているので、ワイド領主だった20〜25歳の時代から召喚されていると推測。鋼が苦手なので鍛冶屋は好かないけれど、自分より年下のギュスターヴなら矯正できるのでは、と思って鍛冶屋には良く通っている、と妄想。
レスリー(ここは新天地)は、スタイルテキストからするとテルムまで時代が進んでいるけれど、拠点を移した直後っぽいので、マリー様はまだカンタール公妃だろうと思われます。
サガフロ2を遊んだ人でも、グスタフとギュスターヴの関係性を誤解していることがありますが、若い頃の彼等自身も、ナ国臣下であるケルヴィンの子がフィニー王家の後継者という未来を知ったら、混乱して頭が痛くなりそうです。

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コメント

雪杜 慎

 こんばんは。

 あまり連続でメッセージを送るのもどうかと思うのですが、こちらのグスタフのSSをサガファンの身内に見せたところ「面白かった」と言っていたので、それだけはお伝えしないとと思い書き込みしました。ヘタレなグスタフ、良いと思います。

 私は自分で遊んだのがロマサガ1~3で、他(RS含む)はその身内が遊んでいるのを見たり聞いたりしているくらいですが、それでも面白かったので、身内もきっと喜ぶと思ったのでした。こちらはまだグスタフを引けていないので、羨ましいそうです。

 うまく感想を書けなくて申し訳ないのですが、楽しく読めたことをお伝えしたくて、取り急ぎこれにて失礼します。
(……と思ったら、アクトレイザーのSSが更新されていてびっくりしました。確かに英雄たちの設定は世界観と矛盾する部分が多いですね。でも魅力も確かにあるので悩ましいです)

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麻生壱埜

雪杜さま、こんばんは。コメントありがとうございます。
妄想垂れ流しと言っていいSSに、まさか感想コメントを頂けるとは思っておりませんで、本当に嬉しいです! 私が書くと大体のキャラクターがヘタレになるんですが(笑)、サガファンの方に面白がっていただけたなら、よかったです。
私はロマサガ1は未プレイなので、今度発売するミンサガリマスターを楽しみにしているところです。
グスタフを引けた!という自慢になっちゃっていて申し訳ないですが、雪社さまのお身内の方のバンガードにもグスタフがお邪魔するよう、祈っております。

(アクトレイザーのSSは、当該記事で言い訳してる通り、ヤマもオチもなく、ただ思ったこと書いただけの話で恐縮です。せっかく書いたから載せておこう、くらいのノリだったのですが、雪杜さまに見付かってしまった……!)

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